久しぶりにヒロと

このところ父の入院で実家に帰ることが多く、あまりヒロといっしょにいることができなかった。事情が事情なのでヒロは口では仕方ないよと言いつつも、心のなかではちょっとスネているのが私にはわかった。それで先週末は金曜の夜から日曜の朝まで、ヒロといっしょにいたのだった。ジュンは気をきかせたつもりなのか、金曜の夜から直さんところに泊まりに行って、土曜は日帰りで温泉に連れていってもらうということだった。
それで金曜の夜、マンションに帰って夕飯の準備をしていると、ジュンが学校から帰ってきて、その後すぐ直さんが会社帰りに寄ってくれた。
私「直さん、すみませんね、いつもジュンがお世話になって・・・」
直さん「世話なんかぜんぜんしてないし、それにジュンちゃんに週末遊んでもらって、ぼくのほうがうれしいし・・・」
ジュン「明日は直さんとデートするんだよね。」
直さん「だいぶ涼しくなったから、ジュンちゃんと温泉に入ってまったりしようかなと思って・・・」
ジュン「オレも最近けっこう忙しかったから、明日は直さんとのんびりする。」
直さん「ジュンちゃんのことは心配しないで、ソウさんはヒロちゃんとゆっくりしてね。」
ジュン「ヒロちゃんってけっこう子供みたいなところあるから、たまにはゆっくりといっしょにいてあげたほうがいいよ。」
私「ジュンはやさしいね、この週末はそうさせてもらうよ。」
直さん「そうそう、ソウさんはヒロちゃんのことだけ考えててね。」
夕食の後、直さんはジュンを連れて帰っていった。そして夜遅くにヒロが仕事を終えてやってきた。
ヒロ「遅くなっちゃった・・・」
私「ヒロ、夕飯は?」
ヒロ「食ってきたよ。」
私「じゃあ、なんか飲む?」
ヒロ「それより、聡一を食べたい・・・」
私「いきなりだな・・・」
ヒロ「だってけっこう会ってなかったじゃんか・・・」
私「そうだけど・・・」
ヒロ「食べる前に、聡一をきれいに洗わなきゃね・・・」
私「注文の多い料理店みたいだな・・・」
ヒロ「聡一のふだんは柔らかいけどときどき硬くなるものを食べたいな・・・」
私「なんだそりゃ・・・」
ヒロ「わかってるくせに。」
私「それじゃあ、風呂に入るか・・・」
ヒロ「うん、いっしょに入ろうね。」
服を脱がせあってから、私たちはバスタブに向かい合って入った。ヒロは服を脱ぐ時からもう元気になっていた。
私「それにしても元気だな・・・」
ヒロ「聡一のせいだからな・・・」
私「ゴメンね、ひとりにして・・・」
ヒロ「このところ聡一のことばっか考えてた。人前でピアノ弾いてる時も聡一の顔が浮かんでくるんだもん、焦ったよ・・・」
私「まさか弾いてる最中にイっちゃったりしなかっただろうな・・・」
ヒロ「イキはしなかったけど、ヤバかったんだぞ・・・」
私「今夜はヒロの気が済むまで楽しもうね。」
ヒロ「じゃあ、寝させないからね。」
私「それは楽しみ。」
ヒロ「俺は本気で言ってるんだからね。」
私「話してばっかりいないで、キスしてくれないの?」
ヒロ「初めて聡一にキスのおねだりされた、やったぜ。」
うれしそうな表情をしてヒロの顔が私に近づいてきた。久しぶりに気持ちのいいキスだった。
ヒロ「聡一も元気になってきたね。」
私「キスが気持ちよすぎて・・・」
ヒロ「きれいに洗ってあげる・・・」
私「自分で洗う・・・」
ヒロ「ダメ、俺がやる。」
私「あんまり触るなよ、感じすぎる・・・」
ヒロ「イクなよ、楽しみはこれからなんだから・・・」
私「ヒロこそ、ギンギンだろうが・・・」
なんとか私たちは無事にお互いを洗い合って、風呂から出た。
寝る前にビールを一杯ずつ飲んでから、私たちはベッドルームに行った。ふたり並んでベッドに横になって、ことを始めようとして、私はティッシュペーパーがなくなっているのに気づき、玄関脇の物入れにストックを取りに行った。5箱組みのビニールをはがして1個を取り出して、ベッドルームに戻ると、わずか3分ほどしかたっていないのに、ヒロはクークーと気持ちよさそうに寝息をたてて眠ってしまっていた。どうもやりたいというのより、疲れのほうが勝っていたのだろう。さっきまで私のことを眠らせないと言っていたくせに思い、ヒロのほっぺたを指でグリグリとしてみたが、ヒロはぜんぜん目覚めるようすもなかった。私は必要のなくなったティッシュを置いて、ヒロの横に寝そべった。
翌朝早く目がさめたので、ヒロのほうを見ると、ギンギンに朝立ちさせてヒロが眠っていた。久しぶりにパンツの上から触ってみると、ヒロは眠っているのにヒクヒクと反応していた。しばらく私は手で握ったり撫でたりしながらヒロのモノの感触を楽しんでいた。しばらくしてさらに硬さを増したら、ヒロはうわっと叫ぶ声をあげて目を覚ました。
私「ヒロ、どうした、怖い夢でも見た?」
ヒロ「べつに怖い夢を見たわけじゃないよ、むしろ気持ちいい夢・・・」
私「なんか叫んだからびっくりしたよ。どんな夢みてたんだよ?}
ヒロ「なんか聡一とずっと気持ちのいいことしてて、そんで最後にふたりで同時にイッたんだよね、と思ったら急に目が覚めて・・・」
私「昨夜、先にさっさと寝ちゃうからだ・・・」
ヒロ「ゴメン、いつの間にか寝ちゃってた・・・」
私「そんで、エッチな夢を見たんだ・・・」
ヒロ「ううう、やっぱ夢だったんだ、パンツが気持ち悪い・・・」
私「まさかヒロ、寝てる間に出したとか・・・」
ヒロ「ゴメン、出ちゃった・・・」
私「よっぽど溜まってたんだな・・・」
ヒロ「ゴメン、マジ溜まってたんだ・・・」
私「まったくヒロは・・・ ほら、パンツ替えてやるから・・・」
クローゼットから洗ったパンツを取ってきて、私はヒロのパンツを替えてやった。濡れたパンツは栗の花の香りがした。
私「ほら、気持ち悪くなくなっただろう、もう少し寝ようか?」
ヒロ「聡一、今おとうさんになってた・・・」
私「そうかな、こういう時は自然にそうなるのかもね・・・」
ヒロ「疲れてるから、昼近くまで寝ていい?」
私「いいよ、土曜なんだから、ゆっくり寝よう。」
ヒロ「ちょっとだけ、ハグして・・・」
軽くヒロをハグをしたまま、私たちは気持よく二度寝を楽しんだ。
そして昼前に起き上がって、ブランチを食べに出かけた。
ヒロ「今日はどうする?」
私「そうだなあ、どっか公園でも散歩しようか?」
ヒロ「なんかのんびりしてていいな、どこの公園に行く?」
私「ここから歩いて行けるところに、昔よくジュンと遊びに行った公園があるけど、そこはどう?」
ヒロ「大人も楽しいの?」
私「べつに児童公園じゃないから、大人もいっぱい来てるよ。」
ヒロ「じゃあ、ちょっと散歩しよう・・・」
ブランチを食べた後、私たちは腹ごなしも兼ねて、小さい道を選んで公園の方に歩いて行った。公園は細長いので、端から端まで歩くとけっこう距離がある。私たちは並んでゆっくりと散歩を続けた。そして公園を出て、帰りの方向に歩いていると、静かな住宅街に新しい店ができていたりして、けっこう楽しい散歩だった。
マンションに帰ると、ヒロはピアノの練習をしたいといって、ピアノを弾き始めた。私はピアノの脇のソファに座って、本を読みながらヒロの練習を聞いていた。
ヒロ「だいぶ弾いたなあ、外はちょっと暗くなり始めたね。」
私「暗くなるのが早くなったよね。」
ヒロ「先週末は、俺ひとりだったから、家でピアノさらってたんだよ。練習が終わって、外を見たら、ほとんど真っ暗になってて、ひとりってこういう時なんかさみしくて嫌なんだよなって思った。」
私「先週は会えなくてゴメンね。」
ヒロ「謝らなくてもいいよ、今回は俺のほうが我慢しなきゃならないことなんだから・・・」
私「ほら、ヒロ、こっちにおいで、さみしくないように、ハグしてあげるから・・・」
ヒロ「やっぱ、ふたりだといいね、聡一がハグしてくれるだけで、落ち着くもん・・・」
私「夕暮れの空を眺めながら、ちょっとフランクを弾いてみたいな・・・」
ヒロ「いいね、この時間にフランクはぴったりだ。」
そして私たちは誰に聞かせるわけでもなく、ふたりの楽しみのためだけに演奏をした。弾いていて、なんかヒロと心が融け合って同一化しているような錯覚に陥っていた。
私「なんかすげえ気持ちい演奏ができた・・・」
ヒロ「俺も。なんかイッちゃいそうな感じだった・・・」
私「これはとても他の人には聞かせられないね・・・」
ヒロ「ジュンちゃんが聞いたら、すげえ嫉妬されそうだ・・・」
私「ヒロはなんでもジュンと争うんだから・・・」
ヒロ「だって、聡一を取り合ってるみたいなもんじゃん・・・」
私「ばあか、ジュンはジュン、ヒロはヒロだろうが・・・」
ヒロ「そうなんだけどね。」
私「すっかり暗くなったね。」
ヒロ「俺、もう少しピアノ弾いていい?」
私「いいよ、晩飯の準備するから、できるまで弾いてていいよ。」
ピアノの音が聞こえてくるキッチンで私は夕飯の支度を始めた。ジュンのピアノを聞きながらの料理もいいものだが、ヒロのピアノはまたジュンと違っていて新鮮な感じがした。
夕食を食べたあと、私たちはDIGAのハードディスクに録画しておいた、ラヴェルのオペラを見た。スペインの時計屋の女房が、亭主の留守中に複数の男を引っ張りこむハメになってしまい、ドタバタするというオペラである。1時間ほどの短いオペラなので、私たち一気に見てしまった。
そして私はいつでもベッドに横になれるように準備をしてから、ヒロとベッドに入った。
私「今日は先に寝るなよ。」
ヒロ「寝ないよ、今夜はぜったいする。」
そう言ってヒロは積極的に私にキスをしてきた。私のほうからキスをしようと思っていたのに、いきなりヒロから濃厚なキスをされて、私はあえなくヒロの術中にはまってしまっていた。私は急激に勃起していた。
ヒロ「聡一も気持ちよくなってきたんだ・・・」
私「ちょっとタンマ、ヒロ、焦りすぎ・・・」
ヒロ「焦ってるわけじゃないよ、情熱的に聡一を愛してるだけ・・・」
私「ヒロ、そんなに一気に攻めて来ないで・・・」
ヒロ「今日は俺のやりたいようにやるから、聡一はそれに協力してくれればいい・・・」
私「ヒロ・・・」
いつになく情熱的なヒロの勢に押されて、私は理性が吹っ飛びそうになっていた。
ヒロ「聡一、いいよ、もっともっと感じて・・・」
私「からだが、からだが溶けそう・・・」
なんだかいつもと逆のパターンで、私は終始受け身になっていた。そのうちに快感の渦に巻き込まれて、私の意識はどこかに吹き飛ばされていた。私のからだのなかには湧き上がる快感に満たされていた・・・
そして日曜の朝、私はちょっとけだるいような疲れを感じながら目を覚ました。となりを見ると、ヒロの寝ていたところは空になっていた。トイレにでも行ってるのだろうかと思ったのだが、私はまだからだを起こす気にならず、またそのまま眠ってしまっていた。
9時頃、私はヒロに起こされた。
ヒロ「聡一、そろそろ起きてよ、朝ごはん食べよう、俺、腹減っちゃってさ・・・」
私「ああ、そろそろ起きるよ。」
ヒロ「じゃあ、リビングで待ってるから、早く着替えておいでよ。」
すでにヒロはシャワーでも浴びたのか、すっきりとした姿になっていた。私も軽くシャワーを浴びて、からだを目覚めさせた。
ヒロ「聡一が寝てる間に、ちょっと出かけてパンを買ってきた。」
私「元気だね・・・」
ヒロ「聡一はまだちょっとダルそうだね。昨夜頑張らせすぎちゃったかな・・・」
私「食べれば元気になるよ。」
私たちはヒロの買ってきたサンドイッチとコーヒーで朝食をとった。窓から差し込む朝の光が眩しかった。
ヒロ「次の週末は、聡一、またお父さんのお見舞いにいくんだろう?」
私「ああ、金曜の夜から、ジュンと行ってくるよ。」
ヒロ「俺のことは心配しないで、しっかり親孝行してきなよ。」
私「ひとりだと、夕暮れ時にさみしいんだろう?」
ヒロ「だいじょうぶ、聡一からだいぶエネルギーもらったから、次の週末くらいはひとりでもさみしくならないと思うよ。」
私「それならいいけど・・・」
ヒロ「お父さん、早く元気になるといいね・・・」
私「ヒロ、ありがとう・・・」
そして朝食後、ヒロは仕事があるといって帰っていった。ジュンが帰ってくる夕方まで、久しぶりに私はひとりの時間を楽しんだのだった。

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また実家に帰る

金曜の夜、私は仕事を終えてすぐにマンションに帰った。ジュンも帰宅したばかりらしかったが、私たちは慌ただしく荷物をして、そのまま駅に向かった。電車に乗って東京駅に行き、駅弁とビールを買って新幹線に乗った。二人掛けのシートに並んで座り、ビールを飲みながら駅弁を広げた。新幹線は品川、新横浜と止まり、西へと走っていた。
ジュン「この前行った時と同じような時間だね。」
私「あの時は気持ちが焦ってたから大変だった。」
ジュン「でもおじいちゃん、手術が成功してよかったね。」
私「ジュンの子供を見るまで死ねないって行ってたから、気力もあったんだろうね。」
ジュン「じゃあ、なるべく早く見せてあげたいけどね・・・」
私「まあ、焦らなくても、おじいちゃんはけっこう長生きすると思うよ。」
ジュン「オレは再来年には院を修了するけど、○香は来年からイギリスに2年くらい修行に行くって言ってるしなあ。」
私「だから、ジュンの予定通り、ジュンが30歳くらいで結婚すれば、じゅうぶんおじいちゃんにひ孫を見せられると思うよ。」
ジュン「それなら、ぜんぜん問題ないよ、あと7年くらいあるから、もしも問題があっても○香と解決することができるし・・・」
私「もう、ふたとも結婚することに決めたのか?」
ジュン「たぶん、そうなるとおもうけど・・・ そうなったらとうさん、さみしい?」
私「まあさみしくないって言ったらウソになるけど、ジュンが結婚したら相手をいちばんに考えるのはしかたないだろう・・・」
ジュン「それは、だいじょうぶだよ、○香とちゃんと話し合いはできてるからね。」
私「話し合いってどんな?」
ジュン「○香は、もちろんオレのことは大切にするつもりだけど、花のほうの仕事もオレ以上に大切にするからっていってるんだ。」
私「それで、ジュンはいいのか?」
ジュン「もちろんだよ。オレのほうは、○香も大事にするけど、それと同じくらいとうさんを大事にするよって言ってるから・・・」
私「ふたりがそれでいいななら、とうさんはいいんだけどね。」
ジュン「それからね、もしもオレたちに子供ができたら、○香は仕事を優先させたいわかだから、おとうさまは育児に慣れてらっしゃるからお手伝いしてほしい、って言ってた・・・」
私「もちろんジュンたちの子供だったら頼まれなくっても面倒みるよ。」
ジュン「でも、とうさん、孫の世話では育児休暇とれないだろう?」
私「まあ、ジュンの時も最初はおばあちゃんに手伝ってもらったけど、それでも仕事しながら育てられたから・・・」
ジュン「オレも育児はすげえしたいから、なんとかなると思うよ。」
私「じゃあ、ジュンたちに子供ができたら、いっしょに住まなきゃならないな。」
ジュン「オレはずっととうさんと同居するつもりだけど・・・」
私「いくらなんでも新婚の時は、ジュンがよくても、○香さんは同居を嫌がるだろう・・・」
ジュン「○香はいいって言ってるからだいじょうぶ。」
私「そうなると、ヒロといっしょに住めないなあ・・・」
ジュン「それもだいじょうぶ、○香はヒロさんさえよければとうさんといっしょに住んでもいいって。」
私「それは、ジュンたちの新婚家庭に、つまり男二人のカップルが同居するってことなんだぞ・・」
ジュン「みんなが幸せになれるんだったら、○香はそんなことにはこだわらないってさ。」
私「でも、向こうのご両親とかはこだわる可能性があるだろう?」
ジュン「もしもそうなったら、○香が問題を解決できるようにちゃんと考えてくれると思うよ。」
私「まあ、とうさんとしてはジュンと暮らせるのはすごいうれしいけど、無理だけはするなよ。」
ジュン「そのへんは、○香ともきちんと相談してからやってるから、だいじょうぶ。」
私「なんか○香さんとジュンって、けっこう現実的なんだね・・・」
ジュン「○香も結婚に幻想なんか抱いてないから、オレたちうまくやっていけると思うよ。」
私「それにしても○香さんは、俊顕んとこのフィアンセとえらい違いだね。」
ジュン「彼女は夢見るお嬢様だからね、でも俊顕とこにはマジでお似合いだと思うよ。」
私「そんで、ジュンは院を終えたらどうするの? 大学の教員?」
ジュン「大学の先生の口はどうしても地方になっちゃうみたいんだよね、だからそれだととうさんと離れちゃうし、○香も仕事のことを考えたら東京の方がいいって言ってるんだ。それに、まだとうさんには話してなかったけど、俊顕のおとうさんに会社に来ないかって誘われてんだ。とうさんはどう思う?」
私「ジュンの将来だから、ジュンが決めればいいと思うよ。俊顕君のおとうさんからは、だいぶ以前にとうさんにも、ジュンを会社に誘っていいか打診があったよ。まあ、ジュンさえよければとうさんは反対しないって言っといたから、ジュンの方にも直接話しがあったんだね。」
ジュン「とうさんはオレが俊顕んちの会社に行くのどう思う?」
私「とうさんもよくわからないけど、今の時代どこに行っても大変なんだから、望まれるところに行くのも悪くないかなって思ってるよ。」
ジュン「でも、オレが大学の先生にならなかったら、おじいちゃんはがっかりするかな・・・」
私「それはしかたないだろう、ジュンのしたいようにしたほうがおじいちゃんも喜ぶと思うけどね。まあ病気が良くなるまでは言わないでおこう。」
ジュン「でもよかった、とうさんとゆっくりいろんな話ができて。」
私「確かにいっしょに住んでるけど、こんなふうに2時間もずっと並んで座ってじっくり話をするっていうのは最近あんまりなかったね。」
ジュン「なんか駅弁食べたら眠くなってきちゃった・・・」
私「着いたら起こしてやるから、とうさんにもたれて寝ていいぞ。」
ジュン「じゃあ、オレ寝るね・・・」
そう言うとジュンは私の方に少しもたれるようにからだを倒して、目を閉じた。そしてしばらくすると本当に眠り始めたらしく、私の肩の上に頭を傾けてきていた。私はジュンを起こさないようにあまり動かないようにしていた。窓の外では街の灯が後ろに飛ぶように過ぎていった。
列車を乗り換えて、実家の最寄り駅に着くと姉が車で迎えに来てくれていた。姉は父が倒れてからずっと実家のほうで母といっしょに暮らしていたのだ。
私「おねえちゃん、迎えありがとう。」
姉「タクシー使うともったいないでしょ。」
私「お義兄さんは?」
姉「明日の朝、こっちに来てくれるわよ。」
私「お義兄さんには、おとうさんの病気のせいで不便させてるね。」
姉「だいじょうぶよ、あの人はひとりでもちゃんと暮らしていける人だから。」
私「それはそうだけど、ちょっとは気を使ってあげなきゃ・・・」
姉「おとうさんが良くなるまでこっちにいていいって、あの人のほうから言ってくれてるんだから。」
私「おねえちゃんは、●吾さんのこと、もうさめちゃったのかよ?」
姉「ソウちゃん、ずいぶんないいぐさね、そんなわけないでしょ。」
私「だって、ほったらかしでしょ・・・」
姉「ある程度夫婦してると、いつもいっしょにいなくても気持ちがつながってればいいのよ。あたしは結婚するなら性格も顔もいい人をずっと探してて、やっと見つけた相手なんだから、大切にしてるから心配しないで。」
私「あっ、そうなんだ、おねえちゃんはお義兄さんの顔に惚れたんだと思ってた。」
姉「言いたいこと言ったわね、まったくソウちゃんは相変わらずかわいくないわねえ・・・」
私「ゴメン、でもお義兄さんに不便な思いさせてまで、おねえちゃんがお母さんのこと手伝ってくれて、感謝してる。」
姉「なによ、急にそんなこと言って・・・ これはおとうさんからホントは口止めされてたんだけど、実はおとうさん、今回の発作が最初じゃないのよ・・・」
私「それどういうこと、ぜんぜん知らない・・・」
姉「知らなくて当たり前よ、だって知らせなかったんだから。何年か前、おとうさん、軽い心臓発作起こしてるのよ。その時は、おとうさん痛がっていたけどずっと意識もあったらしくて、おかあさんの運転する車で病院まで行ったのよ。そんでカテーテル手術とかいうので、症状を抑えて、3日くらいで退院しちゃったのよ。そんで聡一に連絡すると心配するから黙っとけっておとうさんが強く言って、だから知らせなかったの・・・」
私「そうだったんだ・・・」
姉「おとうさんは、あんたやジュンちゃんに迷惑かけたくないと思ってしたことなんだからね・・・」
私「でも親子だよ・・・」
姉「あんたも、もしも入院とかしたとしても、ジュンちゃんにはできるだけ迷惑かけたくないって思ってるでしょ、それと同じよ。」
姉の言葉に私は言い返すことができなかった。確かに私が病気になったら、なるべくジュンの負担にならないようにしたいと思っているからだ。
ジュン「オレはむしろとうさんの世話をできたらうれしいけどね。」
私「それでも親は子供になるべく負担をかけたくないって思うもんなんだよ・・・」
姉「ほら、ソウちゃんもおとうさんの気持ちがわかったでしょ。」
私「じゃあ、おねえちゃんはどうなんだよ、しっかりいろいろおとうさんとおかあさんのためにしてるじゃんか・・・」
姉「あたしは、ソウちゃんと違って、おとうさんたちに孫の顔を見せてあげられなかったから、その罪滅しよ。●吾さんもそう思ってるから、あたしをこっちにいさせてくれてるのよ。」
私「おねえちゃんて、けっこうやさしかったんだ・・・」
姉「ばかね、今頃わかったの。ソウちゃんは相変わらず鈍いわね。」
そして私たちは実家に戻った。母は心労があるせいなのか、少し疲れたような顔をしていた。
私「おかあさん、おとうさんの様子は?」
母「もう心配ないわ、お医者さんもだいじょうぶだって言ってくれてるし。」
私「あんまりちからになれなくてゴメン・・・」
母「いいのよ、こうやって来てくれるだけで、わたしもおとうさんもうれしいんだから。ジュンちゃんもお勉強忙しいのに来てくれてありがとう。」
ジュン「オレはだいじょうぶだよ、それよりおばあちゃん、疲れてるみたいだからもう寝たら?」
姉「おかあさん、先にお風呂に入って、早く寝たらいいわ。」
私「そうだよ、先にゆっくり入ってよ。」
母「じゃあ、一番風呂で悪いけどお先にいただくわ・・・」
風呂場の方に歩いて行くのを見ていると、なんか母はちょっと小さくなったような気がした。

翌日は義兄も到着したのでいっしょに父の見舞いに行った。担当の先生に聞いたところ、順調に回復に向かっているということで、私はとりあえず安心することができた。
そして翌日の日曜日は病院に行ってから、午後の列車で東京にもどってきたのだった。
けっきょく父の看病はまた母と姉に任せることになってしまった。義兄は週末には必ず実家の方に行ってくれているので、私もすまない気持ちになりながらも、東京に帰らざるをえなかったのだ。
2週間後にまた実家に行く予定なので、そのときには父もだいぶ回復しているだろう。
私のできることは、東京にいるときは自分の仕事や、ジュンの世話をちゃんとしていくことしかないようだ・・・
後はこのところヒロにちょっとさみしい思いをさせているから、そちらのほうもちゃんとしていかなければならない。

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実家の父

10月最初の金曜の昼前、母親から私の勤め先に電話がかかってきた。もちろん私の勤め先の連絡先を両親は知っているわけなのだが、今まで電話がかかってくることはなかった。ただごとではない口調で母親が私に告げたのは、その日の朝父親が倒れて、救急車で病院に運び込まれたということだった。母親のほうはパニック状態で、なかなかはっきりとした事情がわからないので、姉のほうにかけ直してもらっうことにした。すぐに姉から電話がかかってきて、父が心臓発作で倒れたという。その時は集中治療室で処置中で、まだ詳しいことはわからないらしい。
姉「ソウちゃん、すぐにこっちに来られないかな、危ないかもしれないみたいだし・・・」
私「わかった、ちょっとジュンに連絡をとって、なるべく早くそっちに行くよ。」
姉「なるべく早く来なさいね。」
私「とにかく、なんとかしてみるよ。何時にそっちに行けるかは後で連絡する。」
姉「とにかく急ぎなさいね。」
その後すぐにジュンの携帯に電話をしたら、授業中なのか留守電だったので、メッセージを入れて、私の方は勤め先に事情を説明して、午後から休ませてもらうことにした。
昼過ぎにジュンから電話がかかってきて、事情を説明すると、午後3時ころには学校を出られるという。私も仕事の引き継ぎなどがあるので、とりあえず4時にマンションまで帰ってくるようにジュンに言った。
4時にマンションに戻るとジュンはすでに帰ってきていた。すぐに当座の着替えくらいをバッグに詰めて私たちはすぐにマンションを出て、電車で東京駅に向かった。そして新幹線に飛び乗って、とりあえず義兄の携帯にかけてみた。
私「もしもし、お義兄さん、聡一です。」
義兄「なんかお父さんが大変なことになって・・・」
私「お義兄さんは、今どこに?」
義兄「少し前に駅について、今はタクシーで病院に向かってるとこ。」
私「じゃあ、母と姉に、私とジュンがそっちにむかってるって伝えておいてください。」
義兄「わかった、伝えておくよ。それで何時ごろこっちに着けるんだ?」
私「9時前には着けると思います。」
義兄「それも伝えておくよ。それから、理*の話だと、お父さんは重体だけど命には別状ないらしいから・・・」
私「お義兄さん、ありがとう・・・」
義兄「ジュンちゃんもいっしょなんだろう、あんまり暗い声を出さないほうがいいよ。」
私「はい・・・」
義兄「ほら、半分泣き声になってる・・・ あっ、もう病院に着いたから、電話切るね。」
私「じゃあ、後で・・・」
席に戻ると、ジュンが心配そうに私を見た。私は努めて明るく言った。
私「おじさんが言ってたけど、おじいちゃんは命に別状はないらしい。」
ジュン「ああ、よかった、心配しちゃったよ。」
私「まあ、まだ手術中らしいけど。」
ジュン「おじいちゃん、良くなるといいね。」

新幹線から在来線に乗り換えて、病院に近い駅に降りたのは9時近かった。すぐにタクシーで病院に向かった。大きな病院の前でタクシーが止まると、義兄が迎えに出てきてくれた。
義兄「おとうさんの手術は無事終わったよ。まだ集中治療室だから会えないけど・・・」
私「おかあさんたちは?」
義兄「あっちで待ってるよ、おかあさんは疲れてるみたい・・・」
控え室に行くと、母と姉が抱きあうように座っていた。
私「おかあさん・・・」
母「聡一、来てくれたのね、ジュンちゃんまでごめんなさいね・・・」
姉「なんとか、手術はうまく行ったみたい・・・」
ジュン「おばあちゃん、疲れてるみたいだよ、少し休んだら?」
義兄「聡一君、お医者さんに詳しい話を聞きに行こう。」
そう言われて私は義兄といっしょに医者の話を聞いた。大変な手術だったらしいが、成功したと医者は言った。
姉「いちど家に帰って、明日の朝早くここに戻ってくればいいのよ。」
私「おかあさん、とにかく明日の朝まではここにいてもしかたないから、とりあえす帰ろう。」
私たちは義兄の車に乗って両親の家に帰った。

父は病院で眠り続け、数日後にやっと意識が戻ったのだった。
私は両親のことが心配だったので、けっきょく一週間以上実家に滞在したのだった。ジュンの方はそれほど大学院を休ませるわけにはいかないので、火曜に東京に帰らせて、私は土曜に戻ってきたのだった。
大騒ぎをしたわりには、父も命を取り留め、この先も無理をしなければ、まだまだ元気に暮らしていけるそうなので、とりあえずが私も安心したのだった。父にはジュンの子供、つまり父のひ孫を抱いてもらうまでは、元気にしてもらわなくてはならない。母親も父の意識が戻ってからは、多少は安心したのか、少しずつ元気を取り戻してきている。
姉「私がこっちでいっしょに住めればいいんだけど、*吾の仕事があるから、そういうわけにもいかないのよね。」
私「お姉ちゃんは、お義兄さんがやさしいのをいいことにして、今でもしょっちゅうこっちに来てるじゃないか。」
姉「*吾には感謝してるわよ。ソウちゃんにそんなこと言われる筋合いはないわよ。」
私「ホント、お姉ちゃんといっしょにいられるなんて、お義兄さんはすげえできた人だよね。」
姉「そうよ、ソウちゃんみたいに、憎たらしいことを言わないからね。」
私「その言葉、お姉ちゃんにそのまま返す。」
義兄「ほらほら、ふたりともケンカしないで・・・ 俺は一人っ子だったからね、聡一くんみたいな弟ができてうれしかったな。」
私「お義兄さん・・・」
姉「こんなのでいいんだたら、いつでもあげるわよ。」
私「ったく、おねえちゃんは・・・」

これで父がもとのように元気になれば、とりあえずまた以前と同じに戻ることができるだろう。でもこの先には私たちにどれだけの猶予が与えられているのだろうか・・・
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悩む父親

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