先週の話

長く入院していた父親の退院が決まったので、ジュンと私はそれに合わせて実家に帰ることにした。父親の退院は平日だったので、私は一日だけ休みを取って、春分の日と合わせて2日間で帰省することになった。
火曜日の朝早く私はシャワーを浴びて目を冷ましてから、着替えをしてジュンといっしょに出発した。
東京駅から新幹線に乗り、途中で特急に乗り換えて、朝早く出たので10時前には実家に帰り着いた。母と姉が私たちを出迎えてくれた。

私「ただいま・・・」
母「おかえりなさい、今朝はあなた達早く起きたんでしょう、今日ははゆっくり病院に行けばいいんだから。」
姉「お帰りなさい、なんか飲む?」
私「ビール。」
姉「まだ午前中よ、まったく。」
ジュン「俺もビール飲んでいいの?」
姉「ジュンちゃんまでしょうがないわねえ、あんまり聡一に似ないほうがいいわよ。」
母「ビールくらい飲んでもいいわよ。」
姉「お母さんは男どもに甘すぎるから・・・」
私「お義兄さんは?」
姉「昨夜、仕事関係の飲み会があって、もうすぐ来ることになってるわよ。」
母「無理して来なくてもいいって言ったんだけど・・・」
姉「いいのよ、来たいって自分で言ってるんだから・・・」
私「そんで、お父さんが退院したら、お姉ちゃん、あっちに戻るんだろう?」
姉「あたしも、4月からあっちでちょっと仕事があるから、戻るわよ。お母さん、もう大丈夫よね。」
母「ずいぶん迷惑かけたわねえ、本当に助かったわよ。」
私「お義兄さん、ホントはお姉ちゃんがこっちにいたほうが、うるさくなくてよかったりして・・・」
姉「誰がうるさいって? まったく聡一は相変わらず可愛くないわねえ・・・」
私「もしもし、お姉ちゃん、俺のこと、いくつだと思ってるんだよ・・・」
姉「聡一はいつまでたってもあたしより年下でしょ。」
私「それはそうだけどね・・・」
姉「○吾は、今でも可愛いわよ、聡一と違って・・・」
私「げっ、どうもごちそうさま、ノロケられるとは思わなかったなあ・・・」
ジュン「兄弟いるといいよね、俺も欲しかったな・・・」
姉「まだ間に合うわよ、ジュンちゃん、聡一に頼んだら?」
私「ひとりじゃ産めない・・・」
姉「まったく情けないわねえ、女のひとりやふたり、なんとかできないの?」
ジュン「とうさんに頼むのはムリだから・・・」
姉「聡一はモテると思ってたのに・・・」
母「ほら、私たちは先に行ってるわよ。」

母と姉は先に病院に行った。けっきょくビールはやめてお茶を飲んでいると、義兄が到着した。すぐに私たちは義兄の車に乗って病院に向かった。
そして昼前に私たちは病院に着いた。父の退院の準備はもうほとんど終わっていたので、父を車に乗せて実家にまで帰った。

父「みんなで来てもらって大変だったな。ジュンまで来てくれるとは思わなかった。」
ジュン「おじいちゃんの退院のお祝いしたかったし・・・」
姉「まあおめでたいことなんだから、みんなでお祝いしましょ。」
母「もうすぐ頼んである祝い膳が来ると思うから、みんなでいただきましょう。」
私「おとうさん、もうすっかりいいんですか?」
父「まあ、なんとか元に戻ったというところだな。」
姉「でも、おとうさん、これから無理しちゃダメよ。」
父「ああ、わかっとるよ。おまえにもいろいろ面倒かけたな、○吾くんも不便をさせてしまった・・・」
義兄「とにかくおとうさんが回復してよかったですよ。」
姉「おかあさん、わたしは今月末であっちに戻るから。」
母「もう大丈夫よ、本当に長いことありがとう、助かったわ。」

私たちはみんなで出前された退院祝の膳を食べた。久しぶりの家での食事だった父だが、やはり以前ほどは食が進まないような感じだった。これもだんだんと回復はしていくのだろう。

そしてその夜、ジュンと私は一緒に風呂に入った。東京のマンションのバスルームに比べるとはるかに広いので、ジュンと入ってもゆったりとしている。
ジュン「とうさん、いいな、お姉さんがいて・・・」
私「昔はけっこう鬱陶しかったけどね・・・」
ジュン「今はすごい仲いいじゃん。」
私「ふたりとも大人になってからはだんだん仲良くなってきたんだよね・・・」
ジュン「まあでもオレは、とうさんが父親で母親でお兄さんでもあるわけだから、それで満足しなきゃね・・・」
私「ジュン、そんなふうに思ってくれてたのか、ホントいい子だね・・・」

風呂でゆっくりと移動の疲れを癒してから、私たちは寝ることにした。いつもにも増してジュンは寝るときに私にくっつきたがった。私がキスをすると満足したのか、すぐに気持ちよさそうに眠り始めた。

翌朝、起きて部屋を出て行くと、すでに義兄は起きてお茶を飲んでいた。

義兄「ああ、聡一くん、おはよう。」
私「お義兄さん、早いですね、今朝は何時に起きたんですか?」
義兄「それほど早く起きてないよ、俺が育ったところは周りが農家ばっかりだったから、すげえ朝は早かったんだよ、だから早起きはぜんぜん平気だね。」
私「それにしても、よく起きられますね。」
義兄「ほら、聡一くんも顔を洗って着替えておいでよ。寝癖ついてるぞ。」
私「あっ、すみません、起き抜けだったから・・・ 顔洗ってきます。」

私はあわてて洗面台で自分の顔を見た。昨夜風呂の後すぐ寝たので寝癖がひどかった。しかたないので、私は軽くシャワーを浴びた。
バスルームから出てくると、朝食の準備ができていた。いつのまにかジュンも起きていた。
朝食を食べた後、私とジュンは、義兄の車で新幹線の駅まで送ってもらった。祭日だったので早めの新幹線にしたので、ジュンと並んで席を確保することができた。

そして21日は、私は平日なので仕事に出かけ、ジュンは練習のために俊顕くんの家に泊まりこみに出かけた。
そしてその夜は、家で晩ごはんを作っていると、仕事を終えたヒロがやって来た。

ヒロ「うわっ、すげえいい匂いしてる。」
私「もうすぐ食べれるから、着替えておいで。」
ヒロ「なんかいいなあ、仕事を終えて帰ると食事ができてるなんて、すげえ幸せな感じがする・・・」

私は「きのう何食べた?」で仕入れたレシピを再現した夕食の仕上げをした。
そしてヒロが部屋着に着替えてきたので、私たちは夕食を食べ始めた。

私「今日はめずらしく全品、ウチで作ったものだよ。」
ヒロ「そうなんだ、いつものお惣菜屋さんのもおいしいけど、聡一の手作りだと思うとさらにおいしい・・・」
私「まあ、特売の食材ばっかりだけどね。」
ヒロ「なんか聡一と出会ってよかったなって、しみじみ思う・・・」
私「おおげさな・・・」
ヒロ「それにしてもジュンちゃんは毎日これを食べてるんだ、ちょっとムカついたりして・・・」
私「ばあか、親子だから毎日食事するのは当たり前だろうが・・・」
ヒロ「早くジュンちゃん、結婚して独立すればいいのに・・・」
私「なんか、ジュンは結婚しても同居するって言ってるけど・・・」
ヒロ「でもジュンちゃんはよくても結婚相手は嫌がるんじゃない?」
私「それも話がついてるようだよ・・・」
ヒロ「マジ、いつになったら聡一を独占できるんだよ・・・」
私「もうしてるだろ・・・」
ヒロ「ぜんぜんしてねえ・・・」
私「今日だってふたりだけだろ・・・」
ヒロ「今日と明日だけじゃん。だから今夜はあとでいいことしようね。」
私「もうコンサート10日前だから、アレは禁止されてるぞ。」
ヒロ「そんなのしたってわかんねえじゃん。」
私「でもしないほうが、いい演奏できると思うよ。」
ヒロ「またおあずけか・・・」
私「コンサートが終わったら、いくらでもできるだろ。」
ヒロ「ああ、ムラムラする・・・」
私「いい演奏するためだから、ちょっとだけガマンしようね。」
ヒロ「しかたないから、夢の中で聡一とやってやる。でもまさか夢精も禁止されてるとか・・・」
私「俊顕くんに聞いてやろうか?」
ヒロ「いいよ、もしも聞いたりしたら、真顔でもちろん禁止ですって、あいつなら言いそうだもん・・・」
私「いくら俊顕でもそこまでは禁止しないと思うけどね・・・」
ヒロ「聡一はあいつに甘すぎる。」
私「息子の友達だよ、だから子供みたいなもんだから、多少は甘いかもしれない。」
ヒロ「それじゃあ、オレの立場は?」
私「もちろん一番大切な相手・・・」
ヒロ「それ、ホント?」
私「嘘言ってもしょうがないだろう・・・」
ヒロ「聡一、好きだよ・・・」

その夜は、なんとかヒロもおとなしく寝てしまった。あんなことを言っても、やはり仕事で疲れているのだろう。私もヒロのとなりで、しばらくヒロの寝顔を見ていた。そのうちに私も自然に眠ってしまっていた。

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ふつうの週末

3月末のコンサートでは、私はジュンのピアノでモーツァルトのヴァイオリンソナタをやることに決まっていた。ジュンとだったら、平日でも夜ならば毎日少しずつでも練習できていた。演奏するホ短調のソナタは二楽章しかない短めのソナタである。テンポや繰り返しをどうするかにもよるのではあるが、10分から15分くらいの演奏時間なので、合わせの練習は早々に仕上がってしまった。

ジュン「あんまりやりすぎると、かえって面白くなくなりそう。」
私「すこし、冷却期間をおこうか?」
ジュン「もういちど、それぞれのパートを見直してみようよ。それからまた合わせてみればいいんじゃない。」
私「わかった、そうしよう。ところでジュンと俊顕の練習はどうするんだよ?」
ジュン「俊顕は20日に帰ってくるから、21日から俊顕の家で泊り込みで集中練習する予定だよ。」
私「そうか、だから23日に全員俊顕ん家に集まるようになってたんだ。」
ジュン「そんでまたコンサート前約10日間はアレはしないようにって、俊顕からとうさんとヒロちゃんに伝言。」
私「ああ、俊顕からとうさんのほうにも注意喚起のメールが来てたよ。」
ジュン「俊顕ったら、とうさんに出したメールだけじゃ心配だから、オレからもとうさんに言うようにって・・・」
私「まったく、俊顕のやつ、イヤミだよな、とうさんへのメールには、若いジュンやオレが我慢できるんだから、聡一さんみたいな大人はもちろん大丈夫ですよね、って書いてきやがった。」
ジュン「でもさ、俊顕ってそんなふうに口では言うけど、ホントは優しいんだよ・・・」
私「それなら、口のほうももう少し優しけりゃ、多少はかわいいんだけどね・・・」
ジュン「そうそう、直さんとヒロちゃんの連弾のほうもだいぶ進んでるみたいだね。」
私「直さんとやるとモーツァルトがすごく楽しく感じられるって、ヒロが言ってたな。」
ジュン「オレもそう思う。直さんって自然に弾いてるだけでモーツァルトになっちゃうんだよね。」
私「なんか直さんとヒロ、最近すげえ仲良くなったし・・・」
ジュン「とうさん、ふたりのこと、気になるの?」
私「直さんもヒロもどっちも大切だからね、どうなのかなと思ってさ。」
ジュン「あのふたりは、どっちも甘えたがりだから、仲のいい友達にはなっても、恋人同士にはならないと思うよ。」
私「まあ直さんもヒロも甘えるの好きだからね」
ジュン「オレもとおさんに甘えるのは好きだな・・・」
私「ジュン・・・」
ジュン「そろそろ寝ようよ、オレ、ちょっと眠い・・・」
私「そうだな、もう寝てもいい時間だな。ほら、ジュン、目をこすらない・・・」
ジュン「オレも花粉症かなあ、たまに目が痒いときがあるんだ・・・」
私「目薬さしてやるよ。」
ジュン「うん、ちょっと待ってね、そのまま寝られるように服脱いでベッドに横になるから。」

そう言うとジュンは来ている服をさっさと脱ぎ始めた。そしてTシャツとボクサーパンツだけになって、ベッドの入って横になった。私はジュンの横に座って、ジュンに目薬をさしてやった。

ジュン「目がスッキリした、とうさん、ありがとう。」
私「なんか、からだは大きくなったけど、ジュンはジュンだな・・・」
ジュン「とうさんもベッドに入ってきてよ。」
私「ちょっと待って、とうさんはパジャマ着るから・・・」
ジュン「オレはTシャツとパンツだけのほうがいい。」
私「そうだな、ジュンは寝るときにパジャマ着てても、いつの間にか下だけ脱いでことがあるもんな・・・」
ジュン「だって、パンツ一枚だってなんかちょっとウザい時があるもん、寝てても無意識に脱いじゃうんだろうね・・・」
私「まあ、何も穿いてなくてもいいけどね、ジュンのはとうさん昔から見慣れてるわけだから・・・」
ジュン「とうさん、くっついていい?」
私「いいよ、こっちにおいで・・・」
ジュン「やっぱ、暖かいね、とうさんにくっつくと・・・」
私「ジュンのからだもホカホカしてて暖かい・・・」
ジュン「なんか眠くなってきた・・・」
私「ほら、寝なさい、眠るまでちゃんと抱いててあげるから・・・」
ジュン「とうさんといると、すげえ落ち着く・・・」
私「眠いんだろ、しゃべってないで寝なさい・・・」
ジュン「おやすみのキスは・・・」
私「まったく甘えて・・・ ほら、これでいいだろう・・・」
ジュン「うん、とうさん、おやすみ・・・」
私「おやすみ・・・」

そして翌朝、私は一度平日と同じ時間に目を覚ましたのだが、布団の中のぬくもりがあまりにも気持ちよくて、またそのまま二度寝をすることにした。ジュンは相変わらずからだを少し丸めて、頭を私の胸のあたりにくっつけて眠っていた。からだは私よりも大きくなったのに、こんなところは以前とぜんぜんかわっていない。私はジュンのくちびるに軽くキスをした。そして朝の光の中で半分眠りながら、心の奥が蕩けるような幸せな気分を感じていた。

そして土曜の朝9時過ぎに私はやっと目を覚ました。となりではジュンが気持ちよさそうに眠っていた。眠っているあいだに無意識に脱いだらしく、下半身ははだかになっていて、若いジュンのものは元気に上を向いていた。私は指で軽くジュンの先の方を弾いた。そうするとジュンが目を覚ました。

ジュン「ふああぁぁ、あっ、とうさん、起きてたんだ、おはよう・・・」
私「そろそろ起きてブランチでもするか?」
ジュン「うん、お腹へった。げっ、オレ、すげえ朝立ちしてる・・・」
私「若いからね、溜まってるのか?」
ジュン「うん、すげえオシッコしたい。ううっ、漏れそうだから、ちょっとトイレ行ってくるね。」

そう言うとジュンは手で前を押さえながら、丸出しの尻を私の方に向けて小走りでベッドルームを出て行った。そしてしばらくしてジュンは柔らかくなった自分のものをぶらぶらさせながらベッドに戻ってきた。

ジュン「ふう、間に合ってよかった・・・」
私「あんなに固くなっててちゃんと出せたのか?」
ジュン「最初は大変だったけど、してるうちにだんだん柔らかくなったから大丈夫、けっこう出たよ。」
私「まあ、そんなもんだよな・・・」
ジュン「でもさ、勃起してるから、漏らさないんだよね。だって、オレ、さっき夢の中でオシッコして目が覚めたから、ちょっと焦ったけど、実際は出てないもんね。昔だったらぜったいオネショしてた・・・」
私「ジュンも大人になったんだなあ・・・」
ジュン「オレが大人になってさみしい?」
私「まあね、でもおまえはいつでもかわいいからね。」
ジュン「ふつうにしてるだけなんだけどね・・・」
私「そろそろ起きようか、シャワー浴びて、ブランチしよう。」

私たちはいっしょにシャワーを浴びて、私はジュンのからだを洗ってやった。そしてその後ゆっくりとブランチを楽しんだ。

ジュン「あれ、このジャムは?」
私「ビンはボンヌママンのだけど、中身は、安売りのいちごを買って作った。」
ジュン「そうなんだ、すごいね。」
私「最近買った本に、特売のいちごを使ってジャムを手作りするっていうのが書かれてて、それを真似した。」
ジュン「なんて本?」
私「コミックだけどね、きのう何食べた?っていう本。」
ジュン「それにレシピがのってるんだ・・・」
私「そのコミックは基本的には、とうさんくらいの年のゲイのカップルが何を食べたか詳しく書かれてるんだよね。面白いって教えてくれた人がいたから、古本屋で探して買ってきた。」
ジュン「ふうん、とうさんとヒロちゃんみたいなんだ・・・」
私「まあ、このジャムを作るのに、とうさんはホームベーカリーを使って手を抜いたけどね・・・」
ジュン「でもきれいな色でおいしいよ。」
私「他にもいろいろ作り方が出てるから、また他のものも作っていくからね。」
ジュン「おおっ、楽しみ。オレにもその本貸してよ、読んでみるから。」
私「いいよ、3巻まで買ってるからね。」
ジュン「なんか読むの楽しみ・・・」
私「そうそう、今日はとうさんはヒロのところの泊まる予定だけど・・・」
ジュン「オレも〇〇さん(ジュンの仮のフィアンセ)の両親もいっしょに晩メシ食う予定だから、帰ってくるとしても遅くなるよ。だから、とおさんがヒロちゃんところに泊まりならちょうどいい・・・」
私「じゃあ、明日の晩ごはんは一緒に食べるという予定でいいか?」
ジュン「うん、いいよ、オレ、明日なんか買っとこうか?」
私「食べたいものあったら買っておきなよ。」
ジュン「そうするよ。とうさん、今日これからどうするの?」
私「午後はスポーツクラブにでも行ってからだを動かすよ。で夕方にヒロのところに行く。ジュンは?」
ジュン「オレは午後は〇〇さんとデートして、そのあとご両親と合流して夜はレストランで食事。」
私「じゃあ、あっちのご両親によろしくと言っておいて。」
ジュン「うん、伝えておくよ。」

昼過ぎにジュンは出かけていった。私はスポーツクラブに行って、マシーンを使ってから、プールでのんびりと泳いだ。
そして夕方、私は途中のスーパーで買物をしてから、ヒロのマンションに向かった。

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コンサートの準備

春休みに入っても、ジュンはアルバイトやら、就活、さらに3月末の俊顕くん家のコンサートに向けた練習などで、忙しく動き回っている。
俊顕くん家のコンサートでは、私も何か一曲やるようにと頼まれていた。準備期間のこともあり、あまり複雑なものはムリなので、短めのモーツァルトのソナタで、昔ちょっとさらったことのあるものを引っ張りだして弾くことにした。モーツァルトなので、ピアノは直さんにでもお願いしようかと思っていたら、ジュンとヒロがどちらも強硬にやりたいと言い始めた。私としては、ジュンを選べば、ヒロにスネられるし、ヒロを選べが、こんどはジュンのほうが機嫌が悪くなるしで、困っていた。どうしようかと悩んでいると名案が浮かんだ。

私「もしもし、聡一です。」
直さん「なんだ、聡一、どうしたの?」
私「こんどの俊顕くん家のコンサートのことなんだけどね・・・」
直さん「ピアノのことでしょ?」
私「そうなんだけど、困ったことにジュンとヒロが、どっちも弾きたがってて・・・」
直さん「なんだ、それなら、ジュンちゃんかヒロちゃんに頼みなよ。」
私「本当は、直にお願いしたかったんだけどね。」
直さん「ぼくのほうは気にしないで、聡一とはすでにモーツァルトやってるからね。」
私「ゴメンね、直。でも、困ったことに、ジュンとヒロ、どっちに弾いてもらっても、なんかしこりが残りそうで・・・」
直さん「あのふたり、なんか聡一をめぐって張り合ってるからね。」
私「そんで、直にお願いがあるんだけどね・・・」
直さん「まさか、ぼくにどっちがピアノ弾くか決めて欲しいとかじゃないよね・・・」
私「直、鋭いなあ・・・」
直さん「なんかどっちに決めても、もう一方から恨まれそうだし・・・」
私「直なら、大丈夫、ジュンは直に懐いてるからどっちに決めても恨んだりしないし、ヒロだって同じだよ。」
直さん「もう、しょうがないなあ、でも、とりあえず聴かないと判断できないけど・・・」
私「やっぱ直は頼りになるなあ、じゃあ今度の土曜の午後、予定あるの、できたらウチに来てくれないか?」
直さん「土曜の午後はスポーツクラブに行こうかと思ってたけど、そっちは午前にすませて、午後は聡一のとこに行くよ。」
私「じゃあ、夜はみんなで夕飯をたべるからね、直もいっしょにね。」
直さん「じゃあ、土曜の午後何時頃行けばいい?」
私「じゃあ、3時頃に来られる?」
直さん「わかった、そのころ行くね。」
私「じゃあ、よろしくね。」

私はひと安心した。直さんならば、ジュンもヒロも懐いているので、うまくおさめてくれるだろう。

そして土曜の午後、直さんがやって来た。ヒロはすでに午前中からウチに来ていて、出かけていたジュンも直さんのすぐ後に帰ってきた。俊顕くんは春休みはアメリカに行っていないので、曲目の選定は私たちに任されていた。

私「今回は、曲目については俊顕くんから任されているからね。」
ヒロ「あの小生意気なヤツがいないと、決めやすくていい。」
私「とにかく、今日は私のやるモーツァルトのホ短調のソナタのピアノを誰が弾くか、決めるからね。」
直さん「とにかく、ジュンちゃんとヒロちゃんとそれぞれといっしょにソウさんに弾いてもらうからね。」
私「そんで、直さんに、どっちが私とコンサートで弾くほうがいいか、決めてもらうから。」
ジュン「おおっ、オーディションやるんだ、で、審査員が直さんってことだね。ぜってえヒロちゃんを負かしてやる。」
ヒロ「そういうことなら、俺もジュンちゃんにはぜってえ負けない。」
直「まあまあ、ふたりとも決闘するわけじゃないんだからね。」
ヒロ「でもなんで聡一、自分で決めないんだよ・・・」
直「ソウさんは、ジュンちゃんもヒロちゃんもどっちも好きすぎて、逆に冷静な判断ができないんだよ。」
ヒロ「それなら、直さんだって、ビミョーにジュンちゃんに甘いじゃんか・・・」
直「ヒロちゃんのことも好きだから、安心しなよ。」
ジュン「ええっ、直さん、ヒロちゃんよりもオレの方を好きなんじゃないの!」
私「こらこら、ジュン、そんなこと言ったら、直さんが困るだろう・・・」
ヒロ「ったく、ジュンちゃんは欲張りだなあ、聡一のことを独占したがるかと思ったら、直さんまで独占しようとして・・・」
ジュン「とうさんはとうさんだし、直さんはオレのとうさん2号なの・・・」
直さん「まあ、どっちにしても、ピアノをどっちにするかは、公平にするからだいじょうぶだよ。」
私「じゃあ、演奏する前に、お茶でもゆっくり飲んで、気分を落ち着けよう。」
直さん「ああ、ソウさんは座ってて。お茶の準備はぼくがするからさ、ジュンちゃんもヒロちゃんも、心を落ち着けて・・・」

直さんがキッチンで紅茶を入れてきてくれた。ヒロは紅茶を飲むと、目を閉じて軽く瞑想を始めていた。

直さん「じゃあ、演奏始めようか。ソウさん、心の準備はだいじょうぶ?」
私「お茶のお陰で、けっこう落ち着けたよ。」
直さん「そんで、ジュンちゃんとヒロちゃん、どっちが先に弾く?」
私「それはコイン投げで決めることにしよう。」

そして直さんがコインを投げて、表が出たらジュンが先、裏だとヒロが先にひくことに決めた。けっきょく表が出て、ジュンと先に弾くことになった。

まずはジュンと演奏した。次にヒロと同じ曲を演奏した。直さんの言うとおり、どちらもいいピアノであって、やぱり私には判断ができなかった。無理にでも直さんに頼んでおいてよかったと思った。

私「直さん、どうでした?」
直さん「ソウさん、なんか奥行きのあるいい演奏だったなあ。ピアノもどっちもよかったし・・・」
ジュン「ねえねえ、オレとヒロちゃんとどっちがよかった?」
ヒロ「直さん、どっちを選んでくれるの?」

ジュンとヒロがふたり揃って、直さんのほうににじり寄っていった。

直さん「こらこら、ジュンちゃんもヒロちゃんも、そんなに目をキラキラさせながら、寄って来ないで。チョーイケメンふたりにそんなふうに訴えかけるような目つきで迫られたら、ドキドキしちゃうだろうが・・・」
私「こらこら、ふたりとも直さんにそんなに迫らないで・・・」
直さん「ふたりともすげえいいピアノだったよ、点数を付けるとしたら同点かな。でもね、この曲はモーツァルトにしては珍しい短調のヴァイオリンソナタだから、ヒロちゃんのほうがちょっと年上だし、曲の陰影はよく表現されてたと思う。でも短調でもモーツァルトだから、なんかソウさんとジュンちゃんの演奏のほうがなんか陰影のむこうに明るさが見えたんだ。だから、ぼくは強いて選ぶんだったらジュンちゃんのほうがコンサートで弾くといいと思うな。そのかわりというわけじゃないけど、ヒロちゃんはぼくと連弾のソナタ、やってくれないかなあ。弾きたい曲がいっぱいあるんだ。今回は、伴奏はジュンちゃんに任せて、ヒロちゃんはぼくの相手をしてくれるとうれしいんだけどね。」
ヒロ「直さんがそう言うなら、今回はくやしいけどジュンちゃんに聡一の伴奏は譲る・・・」
直さん「ヒロちゃん、ありがとね。ヒロちゃんはきっとそう言ってくれるだろうと思ってたよ。」
ヒロ「なんか、直さんに言われると、なんとなく納得しちゃうなあ。」
私「やっぱ直さんにお願いしてよかった・・・」
ヒロ「直さん、じゃあ、どの連弾ソナタにします?」
直さん「ヒロちゃんはどれを弾けるの?」
ヒロ「俺はどれでもいけますよ、だから直さんの弾きたいやつでいいですけど・・・」
直さん「ぼくが今すぐに弾けるのは、K.521ハ長調のソナタ・・・」
ヒロ「それなら俺もすぐに弾ける。」
直さん「でも、何回も練習に付き合ってもらわなきゃならないけど・・・」
ヒロ「できるだけ、時間作ります。」
私「じゃあ、この4人では、まず直さんとヒロで連弾のソナタハ長調、ジュンと私でホ短調のヴァイオリンソナタということに決めよう。」
ヒロ「そんで、ジュンちゃんと俊顕くんは何やるんだっけ?」
ジュン「俊顕ん家にはせっかくピアノが二台もあるんだから、ブラームスの二台のピアノのためのソナタをすることにしたんだ。」
私「それで3曲か、もう少し必要だな。」
ジュン「あとは俊顕が考えるみたいだよ。」

無事コンサートでの演奏の組み合わせも決まり、ちょうど夕飯時になっていたので、私たちは4人でいっしょに夕飯を食べた。

夕食後、私はヒロに今夜泊まっていくかときいたのだが、ヒロはジュンちゃんがいるから今夜は帰ると言った。そのかわり、来週末は俺が聡一を独り占めするからな、と私の耳元でささやいてから、ヒロは直さんといっしょに帰っていった。
ジュンは、コンサートで私と弾くことが決まってうれしいのか、いつもよりもハイテンションだった。
ジュンがいっしょに風呂に入ろうというので、私たちは久しぶりにいっしょに風呂に入った。
そして、比較的早い時間にベッドに入って、他愛のないことを少し話しているうちにふたりとも眠くなってそのまま寝てしまった。





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