ジュンと外出

ジュンも就職してもう三ヶ月以上が過ぎ、だいぶ仕事にも慣れてきたようだった。忙しくはあるけれど、定時に帰る日もあり、仕事も落ち着いてきたようだった。

「こんどの土曜日、とうさん、ひま?」
「別に特に用はないけど。」
「土曜の午後、俊顕の婚約者の○香さんの踊りの発表会があるらしいんだ。そんでオレととうさんにもどうかって、俊顕が言ってるんだけど・・・」
「日本舞踊の発表会か・・・ とうさん、あんまり日本舞踊のこと知らないからなあ・・・」
「まあ、オレもぜんぜんわかんないけど、見たことないから、いちど見てみたいな。」
「じゃあ、とりあえず見に行こうか。」
「ヒロちゃんは、土曜日、どうなんだろう?」
「ヒロは土曜は仕事があるらしい。」
「そう、じゃあ、俊顕にとうさんとふたりで行くって言っとくね。」

そして土曜は、昼前にジュンとマンションを出た。まずは、昼ごはんを食べるために、電車に乗っていった。

「このまえ、直さんに連れて行ってもらった北アフリカ料理がおいしかったから、とうさんにも食べさせたかったんだ。」
「北アフリカ料理って、食べたことないなあ。」
「オレも初めてだったけど、すげえおいしかった。」

私たちは、エキゾチックな内装のレストランに入った。

「この前、ここで食べたクスクスがすげえおいしかったんだ。」
「クスクスって?」
「なんかすげえ小さなパスタなんだよね。」
「そうなんだ、それは食べたいな。」
「ええと、前菜のセットに、クスクスを頼もうよ。それから、とうさん、ビール飲む?」
「この後、日本舞踊の発表会だろう、ビールで眠くなるといけないから、今日はやめとくよ。」
「じゃあ、ミントティーにしよう、これもすげえおいしかった。」
「ミントティーか、めずらしいな。」
「なんか、直さんによると、砂漠で飲むお茶らしいよ。」
「それは楽しみだ。」

私たちは珍しい前菜を食べた。そしてメインのクスクスが出てきた。米よりもさらに小さな粒のパスタで、それに肉と野菜を煮込んだスープをかけて食べるようなっていた。

「なんか、独特の食感だね。」
「ちょっとぼろぼろしてるけど、スープと一緒に食べると、おいしいでしょ。」
「ちょっとリゾット的な感じもするね。」
「クスクスってどこで売ってるんだろう?」
「カル○で買えるって直が言ってた。」
「そう、なら買えるね。こんどウチでも試してみよう。」

昼ごはんを終えて、まだ時間があったのでちょっと繁華街をジュンと散歩してから、発表会の会場に向かった。会場に着くとすでに開場していて、私たちもチケットを見せて中に入った。

席に座っていると、開演前にジュンの隣の席に俊顕くんが座った。その向こうにはご両親もいっしょに座っていた。私はご両親に会釈するだけのあいさつをした。

日本舞踊の発表会ということで、素人っぽい舞台を予想していたのだが、実際はものすごく本格的な公演だった。

前半が終わって、休憩となり、私たちはロビーに出た。

俊顕くん「今日は来てくださってありがとうございます。」
私「招待してくれてありがとう。なんか本格的な公演なんで驚いたよ。」
俊顕くん「なんか今回は今までの総ざらいだそうで、○香さんは、とにかく力が入ってたみたいですよ。」
私「後半はさらにすごいんだろう?」
俊顕くん「なんか、これから一門で偉くなっていくというらしいお弟子さんと、ふたりで難しい出し物に挑戦するとか言ってた。」
私「それは楽しみだ。」
ジュン「俊顕は○香さんに付いてなくていいの?」
俊顕くん「今俺が楽屋に行っても邪魔になるだけだからね。終わってからみんなで食事に行くから、今はいいんだ。」
私「公演が終わったら、ちょっとだけあいさつできるといいけど・・・」
俊顕くん「じゃあ、終わったら、いっしょに楽屋に行きましょう。」

公演の後半は、○香さんとその師匠筋の男性が主役の長い踊りで、日本舞踊に疎い私も自然に引き込まれてしまうようなすばらしさだった。

公演後、俊顕くんに連れられて楽屋に行くと、衣装のまま、お客さんたちにあいさつをしている○香さんがいた。俊顕くんを見ると、○香さんはニコニコしながら近寄ってきた。

○香さん「まあ、ジュンちゃんとお父様、わざわざ来ていただいてすみません。」
私「すごく良かったです。見ていてつい引き込まれてしまった。」
ジュン「オレもすげえ感激した。」
○香さん「お恥ずかしい芸を見ていただいて、そんな過分なお褒めをいただくと、恐縮してしまいますわ。」
俊顕くん「いやあ、ほんとうにすごかったよ。」
○香さん「皆さんにそんなに褒めていただけるなんて、苦労してお稽古した甲斐がありましたわ。」

そこに○香さんと俊顕くんのご両親がやってきた。

○香さんの父上「どうも、皆さん、来てくださって、ありがとう。」
私「こちらこそ、いいものを見せていただきました。」
俊顕くん「踊りがあまりにも色っぽいから、俺、嫉妬してしまったよ。」
○香さんの母上「お家元にも振り付けを始めいろいろ力になっていただいて、なんとか人様にお見せできるようになりましたの。」
俊顕くんの父上「○香さん、いい踊りを見せてもらったよ。」
○香さんの母上「○香、あちらの方にもごあいさつしてらっしゃい。」
○香さん「皆さん、今日はありがとうございました。」

そう言うと○香さんはご両親を伴って、他の人にあいさつに行った。

俊顕くんの父上「聡一君まで来てくれてありがとう。今度、ゆっくり飯でも食おう。ちょっと話したいこともあってな・・・」
私「ありがとうございます。私はいつでも大丈夫ですので、ご都合がついたらお知らせください。」

あまり楽屋前で長居をするわけにもいかないので、私たちは適当なところで俊顕君たちと別れて、外に出た。

私「どっかでお茶でも飲んでいこうか?」
ジュン「オレ、ビールがいい。」

私たちは少し歩いて、ベルギービールを飲ませる店に行った。ちょうど席が空いていたので、とりあえず中に入って、席に座った。
ベルギー名物だというフレンチフライをつまみながら、わたしたちはとてもフルーティーなベルギービールを飲んだ。
私「今日は良かったね。いいものを見て、その後はジュンと、ゆっくりビールが飲めるなんて。」
ジュン「なんかこのところ、まあ仕事も忙しかったけど、あんまりとうさんに甘えられなかったから、今日は思い切り甘えちゃおうっと。」
私「いつも、甘えてるくせに・・・」
ジュン「オレ的にはぜんぜん甘え足りないの。」
私「しょうがないジュンだ・・・」
ジュン「甘えるのは子供の特権だもんね。」
私「会社でなんかあったのか?」
ジュン「まあね、いいことばっかりあるわけじゃないからね、それなりに・・・」
私「なんかあったら、我慢できなくなる前にとうさんに言うんだぞ。」
ジュン「とうさん、ありがとう。とうさんに甘えるとなんか落ち着く。」
私「いいけど、あんまりベタベタすると、ゲイのカップルだと思われるぞ。」
ジュン「別にそう思われてもいいけど。むしろなんかカッコいいじゃん。」

しばらくするとジュンも気が済んだのか、私から少し離れた。わたしたちは会計を済ませて、店を出て、マンションに帰った。

いつもと同じ大皿に盛ったおかずに副菜を何品か添えての夕食をジュンと二人でゆっくりと食べた。

ジュン「それにしても今日の発表会はすごかったよね。」
私「ピアノの発表会もそれなりにお金がかかるけど、踊りは衣装だけでも百万単位だろうからね、桁が違う。」
ジュン「○香さんの踊りの相手役やった人、若いけどけっこうあの世界では有望株らしいよ。」
私「ホント色っぽかったよね。」
ジュン「俊顕ったら、柄にもなく嫉妬してたもんね。」
私「あれはきっと相手役がいい男だったから、そっちの気をひきたかったりして・・・」
ジュン「とうさんは、どう思ったの、カッコいいと思った?」
私「ちょっと思った・・・」
ジュン「ふうん、そうなんだ・・・」

食事を終えて、ジュンはテーブルを片付けて、その上に何か仕事の資料を広げて、難しい顔をして読み始めた。私は、バッハの管弦楽組曲を小さな音で流して、ソファに座って本を読んでいた。

11時過ぎに、ヒロがマンションに帰ってきた。

私「ヒロ、お疲れ、仕事うまくいった?」
ヒロ「今日はまあ義理で断れない仕事だったけどね、それなりにやってきたよ。」
私「冷たいビールでも飲む?」
ヒロ「その前にちょっとからだを洗ってくるよ。」

ヒロは軽くシャワーで汗を流して、部屋着に着替えて、さっぱりとした顔で出てきた。

ジュン「ヒロちゃん、ビール、飲むでしょ。」
ヒロ「おっ、ジュン、やさしいね、俺のこと好きになっちゃった?」
ジュン「なるわけねえだろうが、ビールいらないんだったら、冷蔵庫に戻すよ。」
ヒロ「飲むって。ジュン、ありがと。」
ジュン「とうさんも飲むだろう?」
私「少しでいいよ。」
ジュン「じゃあ、俺と半分こね。」

ヒロは一缶、私とジュンは半分ずつビールを飲んだ。

ヒロ「ジュン、テーブルのこっち側、使うよ。」
ジュン「いいよ、少し片すから、ちょっと待って。」

ヒロはジュンの向かい側に座って、何か広げて読み始めた。私はずっと本を読み続けた。静かに夜が更けていった。

1時過ぎに、私たちは寝ることにした。この時期は、すでにジュンは寝るときは裸族になっていて、ベッドに入ると、さっさときているものを脱いで、素っ裸になって横になった。それにつられて、ヒロも私も裸で寝るようになってしまっていた。
それにしても素っ裸で仰向けに寝ている私の両側に、素っ裸のいい匂いのする若い男に挟まれて、私はいつになってもドキドキしてしまう。勃起しないように努力しているとうちに、ジュンとヒロは私の両側の腕に寄り添うように眠っていた。
私は幸せな気分に全身を包まれて、だんだんと眠りに引き込まれていった。


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