高原の温泉に(その1)

9月の始めに急に実家に帰省するために、仕事を一週間続けて休んだ。それでまた22日に休みを取るのはちょっとまずいかなと思っていたら、ちょうど仕事の波が落ち着いた時期だったので、けっきょく休日の谷間に休みを取って四連休にすることができた。
四連休なので、また実家に様子を見に帰ろうかと思って連絡すると、父親がだいじょうぶだからそんなにひんぱんに帰ってくることはない、と言ったので、当初の予定通り、温泉に行くことになった。

四連休1日目の土曜日、高速の渋滞をなるべく避けるために、朝早く私たちは、直さんの運転する車で出発した。直さんは、自分のマンションを出て、ヒロを途中で拾って、その後私たちのウチまで来てくれたわけなので、、そうとう早起きをしたようだった。

すぐに高速に乗って、渋滞箇所をなんとかそれほど遅くなることもなく通り抜け、10時前には別荘に着くことができた。
別荘に荷物を運び込み、締め切っていた窓を開けて空気を入れ替え、私たちは掃除を始めた。
一ヶ月間以上使われなかったそうだが、それほどホコリまみれということもなく、掃除は程なく終了した。
直さんが持ってきていたハーブティーを、私たちはテラスで高原の空気を吸いながら、ゆっくりと楽しんだ。

直「お昼、どうしようか?」
私「なんかおいしいものあります?」
直「ちょっと行ってみたい手打ちの蕎麦屋さんがあるんだけど・・・」
私「蕎麦か、おいしそうだね。」
直「ジュンとヒロちゃんは?」
ジュン「おいしい蕎麦なら食ってみたいな。」
ヒロ「このへんはおいしい蕎麦屋がけっこうあるって聞いたことがある。」
直「じゃあ、蕎麦で決まりね。」

私たちは車に乗って、そのあたりではおいしいと評判だと言う蕎麦屋に行った。昼前に着いたにもかかわらず、すでに座席は埋まっていたが、それほど待たなくても入れそうだということで、私たちは待つことにした。しばらくまたされて、店の中に入っていくと、けっこう中はゆったりとして広く、私たちは窓側の席で、光を浴びながらゆっくりと手打ちの蕎麦を楽しんだ。

その後、少し高原をドライブして、見晴らしのいい展望台に行って、遠くに見える南アルプスや、すぐ後ろに見える八ヶ岳の眺望を楽しんだ。

別荘に帰る途中にある、立ち寄り温泉に行って、ゆっくりと温泉に入って、私たちはなんとなくたまっていた疲れをとった。

別荘に戻ってから、今度は歩いていける牧場に私たちは夕景を見に出かけた。山の稜線の後ろから太陽の光が空にられて、美しい夕焼けだった。

暗くなる前に別荘に戻り、私たちは夕食の準備をした。4人で手分けして作ると、夕食はあっという間に出来上がった。

テラスのテーブルにクロスを引いて、そこで私たちは夕食を食べ始めた。地上はもう暗くなってしまっていたが、空はまだほんの少し明るさを残していた。

私「もう運転することはないから、みんなでビールを飲めるね。」
ジュン「直の好きなビールも持ってきてるから、いっぱい飲んでね。」
ヒロ「ジュン、俺のは?」
ジュン「ヒロちゃんはとうさんからもらいなよ。」
ヒロ「なんかジュン、かわいくないぞ。」
ジュン「ヒロちゃんにかわいくしてもしょうがないもんね。」
ヒロ「俺だって、ジュンのおとうさん3号のつもりなんだけどね。」
ジュン「そうなりたいんだったら、ヒロちゃん、もっとしっかりしなきゃね。」
ヒロ「俺だって、直さんだったら、負けてないと思うけど・・・」
直「ヒロちゃん、なんかさりげなくぼくのことぼろくそ言ってないか?」
ヒロ「いや、ええと、そういう意味じゃなくて。ていうか、直さん、ゴメン。」
ジュン「ヒロちゃん、もう少し、人として成長しようね。」
ヒロ「うるせえ、ジュン・・・」

それにしても、私は、この四人でいるときは、まるでリラックスしていられる。温泉の効果だけではなく、この雰囲気にも私は癒されていた。

直さんは、お酒が好きなわりには、体質的に酔いやすいので、早起きしたせいもあって、だんだんと眠そうになっていた。

私「今夜は、これでお開きにするか。」
ヒロ「そうだね、寝てもいい時間ではあるよね。」
ジュン「じゃあ、オレは直と2階の和室で寝るね。」
私「直、だいじょうぶ、階段上れる?」
直「階段くらいはまだだいじょうぶ。」
ヒロ「じゃあ聡一、俺たちは1階の奥の和室に行こうね。」
ジュン「ヒロちゃん、エロイこと考えたな。」
ヒロ「な、な、何言ってんだよ、ったくジュンは・・・」
ジュン「まあ、とうさんとヒロちゃんは夫婦なんだからいいんだけどね・・・」
直「ほら、ジュン、上に行くよ。」
ジュン「うん、オレも行く。」
直「じゃあ、聡一、ヒロちゃん、おやすみ。」

直さんとジュンは階段を上がって行った。私たちも奥にある和室に入っていった。

ヒロ「布団敷くけど、ひとつでいいでしょ?」
私「いいよ、いっしょに寝よう。」
ヒロ「なんか聡一、今夜はいつもより優しいような気が・・・」
私「このところ、ふたりともいろいろあって、あんまり会えなかったからね。」
ヒロ「そうなんだよね、もう俺、夜になると聡一のことを考えて悶々としてた・・・」

私はヒロを抱き寄せた。ふたりの顔が近づくと、ヒロは自然に目を閉じた。私はヒロに、私の考えられる最も優しいキスをした。

翌朝、私が目覚めると、ヒロはもう布団にはいなかった。身支度をととのえて、リビングに出て行くと、そこには誰もいなかった。
私はキッチンに行って、コーヒーを入れ始めた。そうしていると、ヒロが外から帰ってきた。

ヒロ「ああ、聡一、起きてたんだ。おはよう。」
私「おはよう、ヒロ。早くからどこ行っての?」
ヒロ「なんかすげえ爽快に目覚めたんで、そのままちょっと朝の高原を散歩してた。」
私「ヒロ、いい顔してるね。」
ヒロ「昨夜、思い切り出すものを出しちゃったら、今朝はホントに気持ちよくて、からだが軽い。」
私「そうか、それは良かった。ちょっと昨日はがんばりすぎたんじゃないかと心配してたんだけどね・・・」
ヒロ「俺のほうはがんばったおかげですげえ快調。聡一は?」
私「すっきり目覚めたよ。」
ヒロ「やっぱ、なんだかんだ言ったって、アレの効果はすごいなあ。」
私「ヒロ、愛してるよ。」
ヒロ「俺も・・・ うわあ、なんか俺、すげえ幸せ!」

ヒロが異常に盛り上がっているところに、直とジュンがふたりで現れた。

直「聡一、ヒロちゃん、おはよう。あれっ、ヒロちゃん、なんか幸せオーラ出してない?」
ヒロ「へへへ、直さん、わかる? 俺、いますげえ幸せなんだ。」
私「直、ジュン、おはよう、よく寝られた?」
ジュン「うん、なんかすげえぐっすり眠れたよ。」
直「ぼくは朝早くいちど目が覚めちゃったけどね・・・」
ヒロ「なんか、ジュンも内側から光り輝いてるような気がするけど・・・」
ジュン「なんか静かで空気がきれいで涼しくて、一晩寝ただけで、からだから悪いものが出て行っちゃったみたいな感じかな。」
私「直にいっしょに来てもらってよかった。」
直「ぼくこそ、ジュンちゃんに迷惑かけたかも・・・」
ジュン「そんなことないよ、直といっしょで俺もすげえうれしいし・・・」
私「とりあえず、朝食を準備するから、テラスで食べよう。」

私たちは、パンと野菜と卵というシンプルな朝食をテラスでゆっくりと食べた。

朝食の後は、ヒロは別荘に置いてある電子ピアノで指慣らしを始めた。私もヴァイオリンを取り出して指慣らしをしたあと、ヒロとモーツァルトのソナタを軽く合わせた。
その後、直とジュンが同じくモーツァルトの連弾のソナタを軽快に弾いた。

ヒロ「もう、素人がそんなに調子良く弾いちゃうと、プロが困っちゃうなあ。」
直「ヒロちゃんにお世辞でもそう言われるとけっこううれしいな。」
ジュン「直とモーツァルトを弾くと、すげえ気持ちいいんだよね。」
私「やっぱ、直はモーツァルトに愛されてると思うな。」
直「この電子ピアノ、わけあって聡一とぼくとで東京から持って来たんだよね。」
ヒロ「このピアノ、電子ピアノでもけっこう高いやつじゃないかな。」
ジュン「デザインがオシャレだもんね。」
直「まあ持ち主は中古だから安かったって言ってたけどね。」
私「別荘の持ち主は連休ここを使わないんだ。」
直「ああ、なんか香港に行くみたい。だから遠慮なく使っていいよって言ってた。」
ヒロ「そういうことなら、遠慮なく使わせてもらおうよ、ピアノのある別荘ってあんまりないからね。」

午前中はかわるがわるピアノでいろんな曲を弾いて過ごした。そして、昼過ぎに私たちは車で出かけることにした。
高原道路に出て、高原の森の中をドライブし、気持ちの良さそうなレストランで昼ごはんを食べた。
そして前日とは違う立ち寄り温泉に行って、露天風呂でゆっくりと温泉に浸かり、まったりと午後を過ごしたのだった。

そして夜は夕食を食べながらの飲み会となった。翌日もまだ別荘で泊まるので、遅くまで飲んでも大丈夫だからだ。
その日もアルコールに弱い直が居眠りし始めたところで、飲み会はお開きになった。直のことはジュンに任せて、ヒロと私は1階の和室にふたりで入った。

ヒロ「なんか、俺も眠くなってきたよ。」
私「じゃあ、もう寝ようか。」
ヒロ「聡一は今夜はしなくてもいいの?」
私「昨夜、じゅうぶんに楽しんだからね。」
ヒロ「明日の夜するんだったら、今夜は俺もいいよ。」

けっきょく私たちは、布団にいっしょに横になって、そのまま寝ることにした。私たちはお互いの体温を感じながら、気持ちよく眠っていた。

そして翌朝、私はものすごい気持ちいい気分に全身が包み込まれているような感じで目を覚ました。

ヒロ「あっ、聡一、起きちゃった?」
私「なんか、すげえ気持ちいいと思ったら、ヒロが触ってたんだ・・・」
ヒロ「朝目が覚めたら、聡一ったら、すげえ勃っちゃってるから、つい触っちゃったよ。」
私「おもちゃじゃないんだから・・・」
ヒロ「俺のも触ってよ。」
私「しょうがないなあ・・・」

私たちは朝の光の中で、お互いの固くなったものを静かに擦りあった。まだふたりとも完全に目が覚めていないみたいで、半分寝ぼけたまま、私たちはだんだんと快感が強まっていくのを感じてくのを感じていた。

そしてそのまま最後まで擦り続けて、最後はふたりともからだのなかに貯まっていたものを、勢い良く発射したのだった。

そのまま、私たちは二度寝をしてしまい、次は9時過ぎに目を覚ました。
リビングに行くと、直とジュンは朝食を済ませて、ふたりとも読書をしていた。

ジュン「ああ、とうさんたち、起きたんだ。」
私「ちょっと寝すぎたかな。」
直「でもがきれいなせいかホント気持ちよく眠れるよね。」
ヒロ「直さんたちは早く起きたの?」
ジュン「まあ、けっこう早く目が覚めたから、ちょっと直と外を散歩してから、朝メシ食った。」
私「さて、今日はどうしようか?」 (続く)


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急に実家に帰る

9月1日の朝、それもまだ外が薄暗い時間に、電話が急になり始めた。ジュンが動くとすぐに目が覚めるのに、隣の部屋に置いてあるとはいえ、電話の音ではすぐには目は覚めなかった。呼び出し音は長く鳴り続けたので、私は寝ぼけながら何とかリビングに歩いて行き、電話に出た。

母「聡一、びっくりしないでね、あわてないでね、お父さんが、お父さんが大変なの。」

電話からは母のこれ以上ないくらいに暗い声が聞こえてきた。

私「お母さん、お父さんがどうしたって?」
母「だから、お父さん、夜中に気分が悪くなって、救急車で病院に運ばれたの・・・」
私「えっ、お父さんが、倒れた?」
母「なんか夜中にトイレに行こうとして急に倒れて、慌てて救急車を呼んだの・・・」
私「そんで、お父さん、どうなの?」
母「今、お医者さんが検査してくれてて、まだ詳しいことはわからないのよ。」
私「今、お母さん、ひとりなの?」
母「そうなの、もう、お母さん、心細くて、いてもたってもいられないのよ・・・」
私「そんでお姉ちゃんは?」
母「すぐに来れないって言ってるのよ、こんな時に・・」
私「とりあえず、なんとかそっちに行くから、ちょっと待ってて。」
母「聡一、早く来てちょうだい・・・」

ジュン「とうさん、どうしたの?」
私「おばあちゃんから、電話。おじいちゃんが入院したらしい。」
ジュン「そうなんだ、おじいちゃん、だいじょうぶかなあ・・・」
私「とにかく、とうさん、なるべく早く行くことにするよ。」
ジュン「とうさん、仕事は?」
私「月曜の朝の会議は休めないから、その後午後に新幹線で行くよ。」
ジュン「おじいちゃん、だいじょうぶかなあ。オレもいっしょに行くよ。」
私「ジュンは、とりあえず今日は仕事をしてなさい。とうさんが病院に行って、おじいちゃんの様子を確認してから、ジュンに連絡するから。」
ジュン「わかった、そうする。できたら明日、休めるか会社できいてみる。」

私は次に姉のところに電話してみた。

私「もしもし、聡一です。」
姉「ああ、ソウちゃん。お母さんからの電話のことでしょ?」
私「なんか、お母さんの話が要領を得なくて、いまいち様子がつかめないというか・・・」
姉「心配しなくてだいじょうぶよ、きっとお父さん、最近調子に乗っていろいろ頑張ってたから、疲れと夏バテでからだがついていけなかったんじゃないかな。」
私「そうなんだ、なんかお母さん、すごい暗い声だったから・・・」
姉「あたしも、ちょっとこっちの都合がついたら、行ってみるつもり。」
私「俺も午後の新幹線で行くつもりだから。」
姉「じゃあ、病院で会いましょう。」

どうも姉の様子だと、それほど差し迫っていないような感じだった。

とりあえず、コーヒーを淹れてジュンとふたりで飲んだ。そして、しばらくして朝食を取ると、私は帰省する荷物を持って仕事に向かった。
午前中の会議を終えて、昼に私は新幹線に乗るために東京駅に向かった。東京駅からは一番先に発車する新幹線に乗って、途中で在来線の特急に乗り換えて、病院に一番近い駅からタクシーに乗った。

夕方病院に着いて、父親の病室をたずねると、父はベッドで眠っていた。担当の先生に様子を聞くと、疲れと夏バテで、一時的に貧血状態になって、気分が悪くなったらしい。他にはとりたてて悪いところもなく、二日後くらいには退院できるらしい。
そこに担当の看護師さんが来て、母も急に入院することになったという。
父のそばに私は座って母を待っていると、母の診察をした先生が来てくれて、母もちょっと入院した方がいいという。

私「母も具合悪いんでしょうか?」
医師「からだの方は特に悪いところはないですね。それより、ちょっと精神的なショックのせいで、軽く気を失われたんですね。まあ、お母さんの方も念のため入院した方が安心でしょう。」
私「そうですか、よろしくお願いします。」

そこに姉が駆け込んできた。

姉「お母さんまで倒れちゃったんだって?
私「ふたりとも命には別状ないみたいだよ。」
姉「よかったわ、もう心配しちゃったわよ。」
私「でもふたりそろって入院することになるとはねえ。」
姉「それじゃあ、いろいろと必要なものを準備しなきゃね。」
私「お姉ちゃん、そっちはよろしく・・・・」
姉「わかったわ、ちょっと家に帰ってくるわ。その間、ソウちゃん、お父さんたちをお願いね。」

一度実家に戻って、必要な物を取って姉は戻ってきた。

姉「ふたりともよく眠ってるみたいね。」
私「年だから疲れたんだろうね。」
姉「もう面会時間も過ぎてるから、できたら一度私たちには帰宅してほしいって言ってたわ。」
私「一度帰って、明日早く来ようか?」
姉「そうね、そうしましょう。」

私はジュンに電話した。ジュンは定時で仕事を切り上げて、マンションに戻ったところだった。

ジュン「おじいちゃんの様子は?」
私「ああ、夏の疲れがどっと出たみたい。今、寝てるよ。」
ジュン「そうなんだ、よかった。オレ、この後、夜行バスでそっちに行くから。」
私「会社、だいじょうぶなのか? 無理しなくていいぞ。」
ジュン「だいじょうぶ、明日一日は休めるから。」

姉とふたりで実家に戻っていると、夜遅く義兄がやってきた。

義兄「お義父さん、どう?」
姉「ぐっすり寝てるわよ。別に心配することないみたい。」
義兄「そうなんだ、よかったね。」
私「お義兄さん、来てもらってすみません。」
姉「明日、休めるんだ。」
義兄「明日一日だけだけどね。」
姉「ソウちゃんは、少し休めるの?」
私「うん、今週は休ませてもらうよ。久しぶりに親孝行でもしようかなと思って。」
姉「あら、ソウちゃんから親孝行なんて言葉が出るとは思わなかったわ。」
私「ひでえなあ、お姉ちゃんは・・・」
姉「あたしも明日、○吾といっしょに帰るから、お父さんたちのことは、今回はソウちゃんに頼んだわよ。」

夜も遅かったので、その夜はそのまま私たちは実家で寝た。
翌朝、朝食を済ませてから、ジュンの乗ってくる夜行バスの降り場に行って、ジュンをひろっってそのまま病院に行った。

病室に入ると、父はもうベッド上に上半身を起こして、軽くストレッチをしていた。

姉「お父さん、起き上がってだいじょうぶなの?」
父「ああ、さっき朝ごはんを食べたら、すっかり良くなったよ。」
ジュン「でも、おじいちゃん、無理しちゃダメだよ。」
父「ああ、無理はしておらん。ジュンの子供を見るまでは死ぬに死ねないからな。」
姉「まったく、お父さんはこんなときにのんきなんだから。」

父は心配なさそうだったので、私たちは母の病室に行った。母はまだぐっすりと眠っていた。
看護師さんに聞くと、精神安定剤の影響でよく眠っているから、とりあえず心配はいらないと言う。

ジュン「おばあちゃん、良く寝てるね。」
姉「なんか、先回りして心配ばっかりするのよね、最近のお母さんは。」
私「お姉ちゃんみたいに、神経がぶっとくないもんね。」
姉「うるさいわねえ、あたしは神経が図太いんじゃなくて、しなやかなのよ。」
ジュン「うん、おばちゃんはちょっと性格がおじいちゃんに似てる気がする。」
姉「ジュンちゃんから見ても、やっぱりそうか。逆にソウちゃんはお母さん似なんだから、むやみに気に病んだりしないようにしなきゃね。」
ジュン「おばちゃん、とうさんのこと心配してくれてありがとうね。」
姉「こんなソウちゃんでも、あたしの弟なんだから。」
私「なんか、引っかかる言い方だなあ。」
義兄「俺が言うのもなんだけど、理○は聡一くんのことをホントに大切に思ってるみたいだよ。」
ジュン「とうさんは、兄弟がいていいなあ・・・」
義兄「俺もそう思うよ。」

母親は目覚める気配がなかったので、ジュンと姉はとりあえず父の方を見てくると行って、部屋を出て行った。

私「兄貴、わざわざ来てもらってすみません。」
義兄「お義父さんたちにはちょっと悪いけど、こんな機会でも聡一に会えるのはうれしい。」
私「兄貴・・・」
義兄「そんな困ったような顔するなよ。今回は会えただけでガマンするから・・・」
私「兄貴、ゴメン。」
義兄「そのかわり、次の機会にはたっぷりと付き合ってもらうからな。」

しばらくすると姉が父のところから戻ってきた。

姉「ソウちゃん、ちょっと来てよ。もう、お父さんったら、今日退院するって言い出したのよ。」
私「とうさんには、ジュンから言わせればいいだろう、お父さんはジュンの言うことならきくから。」
姉「それが、ダメなのよ、とにかく来てちょうだい。」

姉と私は義兄を母のところに残して、父の病室に行った。

私「お父さん、今日退院したいんだって?」
父「どこも悪いところがないんだから、退院してとうぜんだろう。」
私「確かに、今回は特に悪いところは見つけられなかったみたいだけど、でもとりあえずもう少し様子を見ようよ。それにお母さんのこともあるし、今夜は病院にいてよ。」
ジュン「ねえ、おじいちゃん、オレ、社会人になったばっかりで、今日しか休めないから、今日の夜東京に帰るけど、おじちゃんがこのまま入院しててくれると、すごく安心して帰れるんだけどなあ、今日退院しなきゃダメ?」
父「ジュンにそう言われると、おじいちゃん、困ってしまうぞ。」
私「とにかく今夜は病院にいて様子を見ようよ。」
父「そうか、おまえたちがそう言うなら、別に悪いところはないが、今夜くらいは医者の世話になるか。」
ジュン「そうだよ、おじいちゃん、そうしなよ。おじちゃんが病院にいてくれると、オレも安心できるし・・・」

その後、父の病室を出たところで姉が私たちに言った。

姉「もう、お父さんったら、あたしの言うことはぜんぜん聞かないんだから。なんでソウちゃんの言うことなら聞くのかしら。」
私「今日はたまたま説得できただけだよ。」
ジュン「おじいちゃんも少しずつ頑固になっていってるよね。」

母の病室に戻ると、母は目を覚ましていた。

姉「もう、お母さんまで倒れちゃって、心配させないでよ。」
母「お父さんはどうなの?」
姉「だいじょうぶよ、もうピンピンしてるわよ。」
母「そう、それは良かった。」
私「お母さんも安心したら、少しは元気が出るでしょ。」
ジュン「おばあちゃん、早く元気になってね。」
私「まあまあ、ジュンちゃんまで来てもらって、ほんとうに迷惑かけたわねえ。」
姉「お父さんもたいしたことなかったんだから、お母さんも早く良くなってよね。」
母「ジュンちゃん、来てくれてありがとう。おばあちゃんはもうだいじょうぶだから、お仕事いそがしいんでしょ、私のことは気にしないで、東京に帰ってね。」
姉「それにはお母さんにもっと元気になってもらわないと。」
私「二三日入院して、いろいろ調べてもらうといいよ。」
姉「あたしは今日の夜帰るけど、ソウちゃんはまだしばらくこっちにいてくれるみたいだから、お母さんも安心して入院してなさいよ。」
母「あなたたち、お昼は食べたの? あたしの方はいいから、なにか食べてきなさい。」
姉「こんな時にあたしたちの食事のことを心配しなくてもいいのに。」
私「じゃあ、ちょっと昼飯を食べに行こうよ。」
母「そうしてちょうだい、今日はお母さん、準備できないから。」

両親ともそれほど心配なさそうなので、私たちは4人で病院を出て、車でレストランに出かけた。

姉「それにしてもびっくりさせられたけど、たいしたことなくてよかったわ。」
義兄「ホントだね、思ったよりずっとお元気だった。」
私「お兄さん、いつも世話かけてすみません。」
義兄「俺のことはいいんだけどね、聡一くんやジュンちゃんは東京からだから大変だよ。」
姉「昼が終わったら、いったん家に戻って、あたしが必要なものを準備するわ。それを持って病院に行って、その後あたしたちは帰るわよ。ジュンちゃんも、いっしょにどう? 新幹線の駅まで車で送るわよ。」
私「それならジュンも早めに東京に戻れるな。」

私たちはとりあえず実家に戻って、姉は入院に必要なものを用意してくれた。
病院に戻ると、母は眠っていたが、父はベッドにはいなかった。検査か診察中と思って、看護師さんに聞くと、そうではないという。義兄とジュンが、父を探しにいってくれた。
しばらくして、ジュンが父をつれて戻ってきた。

姉「もう、お父さん、どこをウロウロしてたのよ、心配するじゃない。」
父「なあに、お母さんと話そうと思ったら眠ってるし、退屈だからちょっと屋上に行って、景色を眺めてただけだ。」
ジュン「おじいちゃん、もうだいじょうぶそうだね。」
父「ジュンには心配かけたな。おじいちゃんはもうだいじょうぶだ。」
姉「あたしたちは、これから帰るわよ。ソウちゃんが残ってくれるから、心配ないわね。」
父「おまえたちにも迷惑かけたな、もうお父さんはだいじょうぶだ。」
義兄「おからだ、大事にしてくださいね。」

ジュンは新幹線の駅まで、義兄夫婦の車に同乗して出発していった。

残った私は、母と病室で少し話をした。

母「聡一、今回はゴメンなさいね、たいしたことないことで会社を休ませちゃって・・・」
私「まあ、こういう時のために有給休暇があるんだから。」
母「でも、聡一が帰ってきてくれて、お母さん、うれしいわ。」
私「でも、お父さんもお母さんもたいしたことなくて良かったよ。」
母「でも聡一が優しい子で良かったわ。聡一が子供の頃は、お母さん仕事であんまり聡一の世話をしてあげられなかったでしょ、それがお母さん、ずっと気になってたのよ。」
私「なんだ、お母さん、そんなこと気にしてたんだ。」
母「そうよ、本来なら、ずっとうちにいて、子どもたちの面倒を見なきゃならなかったんだけど、あたしは仕事の方を選んだわけでしょ。」
私「でも、それはうちだけじゃなかったと思うけどね。それほどさみしく感じたこともなかったしなあ・・・」
母「母親は子供にいろんなことしてあげたいんだけど、なかなか思うようにはいかないのが歯痒いのよね。」
私「まあ、その気持ちは、俺も息子がいるからわかるよ。ジュンにはもっといろんなことをしてやりたいってね。でも現実には限界があるよね。」
母「そうね、聡一も社会人の息子がいるんだものね。なんか聡一はいつまでも子供のような気がしちゃって・・・」
私「俺ももうじゅうぶん大人なんだけどね。」
母「あら、こんなことを聡一に話すつもりなんかなかったんだけど、入院なんかして、ちょっと気が弱くなったせいかしらね。」
私「早く元気になってよ。」
母「そうね、もう少し頑張らなきゃいけないわね。」

翌日、両親揃って無事に退院をして、うちに帰ってきた。そして私は週末まで、珍しく両親と3人でゆっくりと過ごした。少しは親孝行ができたのかもしれない。


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