実家の父

10月最初の金曜の昼前、母親から私の勤め先に電話がかかってきた。もちろん私の勤め先の連絡先を両親は知っているわけなのだが、今まで電話がかかってくることはなかった。ただごとではない口調で母親が私に告げたのは、その日の朝父親が倒れて、救急車で病院に運び込まれたということだった。母親のほうはパニック状態で、なかなかはっきりとした事情がわからないので、姉のほうにかけ直してもらっうことにした。すぐに姉から電話がかかってきて、父が心臓発作で倒れたという。その時は集中治療室で処置中で、まだ詳しいことはわからないらしい。
姉「ソウちゃん、すぐにこっちに来られないかな、危ないかもしれないみたいだし・・・」
私「わかった、ちょっとジュンに連絡をとって、なるべく早くそっちに行くよ。」
姉「なるべく早く来なさいね。」
私「とにかく、なんとかしてみるよ。何時にそっちに行けるかは後で連絡する。」
姉「とにかく急ぎなさいね。」
その後すぐにジュンの携帯に電話をしたら、授業中なのか留守電だったので、メッセージを入れて、私の方は勤め先に事情を説明して、午後から休ませてもらうことにした。
昼過ぎにジュンから電話がかかってきて、事情を説明すると、午後3時ころには学校を出られるという。私も仕事の引き継ぎなどがあるので、とりあえず4時にマンションまで帰ってくるようにジュンに言った。
4時にマンションに戻るとジュンはすでに帰ってきていた。すぐに当座の着替えくらいをバッグに詰めて私たちはすぐにマンションを出て、電車で東京駅に向かった。そして新幹線に飛び乗って、とりあえず義兄の携帯にかけてみた。
私「もしもし、お義兄さん、聡一です。」
義兄「なんかお父さんが大変なことになって・・・」
私「お義兄さんは、今どこに?」
義兄「少し前に駅について、今はタクシーで病院に向かってるとこ。」
私「じゃあ、母と姉に、私とジュンがそっちにむかってるって伝えておいてください。」
義兄「わかった、伝えておくよ。それで何時ごろこっちに着けるんだ?」
私「9時前には着けると思います。」
義兄「それも伝えておくよ。それから、理*の話だと、お父さんは重体だけど命には別状ないらしいから・・・」
私「お義兄さん、ありがとう・・・」
義兄「ジュンちゃんもいっしょなんだろう、あんまり暗い声を出さないほうがいいよ。」
私「はい・・・」
義兄「ほら、半分泣き声になってる・・・ あっ、もう病院に着いたから、電話切るね。」
私「じゃあ、後で・・・」
席に戻ると、ジュンが心配そうに私を見た。私は努めて明るく言った。
私「おじさんが言ってたけど、おじいちゃんは命に別状はないらしい。」
ジュン「ああ、よかった、心配しちゃったよ。」
私「まあ、まだ手術中らしいけど。」
ジュン「おじいちゃん、良くなるといいね。」

新幹線から在来線に乗り換えて、病院に近い駅に降りたのは9時近かった。すぐにタクシーで病院に向かった。大きな病院の前でタクシーが止まると、義兄が迎えに出てきてくれた。
義兄「おとうさんの手術は無事終わったよ。まだ集中治療室だから会えないけど・・・」
私「おかあさんたちは?」
義兄「あっちで待ってるよ、おかあさんは疲れてるみたい・・・」
控え室に行くと、母と姉が抱きあうように座っていた。
私「おかあさん・・・」
母「聡一、来てくれたのね、ジュンちゃんまでごめんなさいね・・・」
姉「なんとか、手術はうまく行ったみたい・・・」
ジュン「おばあちゃん、疲れてるみたいだよ、少し休んだら?」
義兄「聡一君、お医者さんに詳しい話を聞きに行こう。」
そう言われて私は義兄といっしょに医者の話を聞いた。大変な手術だったらしいが、成功したと医者は言った。
姉「いちど家に帰って、明日の朝早くここに戻ってくればいいのよ。」
私「おかあさん、とにかく明日の朝まではここにいてもしかたないから、とりあえす帰ろう。」
私たちは義兄の車に乗って両親の家に帰った。

父は病院で眠り続け、数日後にやっと意識が戻ったのだった。
私は両親のことが心配だったので、けっきょく一週間以上実家に滞在したのだった。ジュンの方はそれほど大学院を休ませるわけにはいかないので、火曜に東京に帰らせて、私は土曜に戻ってきたのだった。
大騒ぎをしたわりには、父も命を取り留め、この先も無理をしなければ、まだまだ元気に暮らしていけるそうなので、とりあえずが私も安心したのだった。父にはジュンの子供、つまり父のひ孫を抱いてもらうまでは、元気にしてもらわなくてはならない。母親も父の意識が戻ってからは、多少は安心したのか、少しずつ元気を取り戻してきている。
姉「私がこっちでいっしょに住めればいいんだけど、*吾の仕事があるから、そういうわけにもいかないのよね。」
私「お姉ちゃんは、お義兄さんがやさしいのをいいことにして、今でもしょっちゅうこっちに来てるじゃないか。」
姉「*吾には感謝してるわよ。ソウちゃんにそんなこと言われる筋合いはないわよ。」
私「ホント、お姉ちゃんといっしょにいられるなんて、お義兄さんはすげえできた人だよね。」
姉「そうよ、ソウちゃんみたいに、憎たらしいことを言わないからね。」
私「その言葉、お姉ちゃんにそのまま返す。」
義兄「ほらほら、ふたりともケンカしないで・・・ 俺は一人っ子だったからね、聡一くんみたいな弟ができてうれしかったな。」
私「お義兄さん・・・」
姉「こんなのでいいんだたら、いつでもあげるわよ。」
私「ったく、おねえちゃんは・・・」

これで父がもとのように元気になれば、とりあえずまた以前と同じに戻ることができるだろう。でもこの先には私たちにどれだけの猶予が与えられているのだろうか・・・

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まとめ【実家の父】

10月最初の金曜の昼前、母親から私の勤め先に電話がかかってきた。もちろん私の勤め先の連絡先を両親は知

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No title

こんにちは、タクミです。一度だけコメントをした事がある者です。
記事を読んでびっくりしました。

お父様の体が心配です、聡一さんも大丈夫ですか?
取り乱しているように感じたので。

Re: 安心しました

KAZUさま

とりあえず父も命に別状がなくてほっとしています。とはいえ回復にはまだまだ時間がかかるようなので、まだまだ安心はできません。
やっぱりこういうことが起こると、無事でいることの大切さを感じますね。
KAZUさんのお父さんもお大事にしてくださいね。

Re: No title

タクミさま

コメントありがとうございます。
なんとか手術が成功して、命は取り留めましたが、回復には時間がかかるようです。
最初母から連絡を受けた時は情報がはっきりしなくてちょっと焦りましたが、命に別状がないということで、とりあえずはほっとしています。
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