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俊顕君の父上に会う

ある日の夜、携帯に俊顕くんの父上から電話がかかってきた。

父上「聡一くん、今電話しとってもだいじょうぶかね。」
私「はい、だいじょうぶです。」
父上「用と言うほどのことではないのだが、近いうちにメシでも食わんかね。」
私「はい、ご一緒させてください。」
父上「では、来週、聡一くんは時間があるか?」
私「ええと、来週でしたら、夜はいつでもだいじょうぶですが。」
父上「それなら、金曜の夜にでも、ちょっと出てきてもらえるかね。」
私「はい、どこでもうかがいます。」
父上「では、場所が決まったら、メールを入れるよ。」
私「よろしくお願いします。」

私は俊顕くんの父上と電話をしながら、少し緊張していた。面と向かって会うとそれほど緊張しないのだが、電話だとなぜかちょっと緊張してしまう。電話だと表情が読めないからかもしれない。
確かに以前、俊顕くんの婚約者の日本舞踊の会であった時に、食事の誘いは受けていたが、それはお愛想のひとつだと私は思っていたからだ。
とにかく考えてみても、俊顕くんの父上が何を私と話したがっているのか、よくわからなかった。とにかくあって話してみるしかないだろう。

そして食事をする日、私は少し早い目に、目的の店の最寄り駅に着いていた。そのまま行くとちょっと早すぎるので、私は駅前の商店街を散歩して時間をつぶした。
そして約束の時間の5分前に、私は店に行った。
中に入って、和服の女性に案内されて、私は奥まったところにある個室に入った。あまり広くはないが、雪見障子の向こうには手入れの行き届いた坪庭が見えていた。

和服の女性「いらっしゃいませ。私は女将の○○でございます。さきほど●●様からお電話がございまして、5分ほど遅れるということでございます。先にのどを潤すものをお持ちするように申し遣っております、どういたしましょうか?」
私「それでは、お茶をお願いします。」
和服の女性「かしこまりました。ごゆっくりおくつろぎください。」

しばらくしてお茶が出されたころ、俊顕くんの父上が少し遅れて現れた。

父上「すまんすまん、少し遅れてしまったな。」
私「どうもご無沙汰しています。」
父上「なあに、それはお互いさまだよ。とりあえず、乾杯でもするか。」

そこに女将がビールを乗せた盆を持って部屋に入ってきた。そして女将の手でグラスに冷たいビールが注がれた。

父上「まあなんでもいいが、とりあえず再会を祝して乾杯だな。」
私「ありがとうございます、乾杯。」
父上「この間は俊顕が酔って、聡一くんにも迷惑かけたそうだな。」
私「俊顕くんは迷惑なんかかけてませんよ。まあ、多少は酔ってたみたいでしたが・・・」
父上「聡一くんにまで甘えてしまったみたいだな。」
私「俊顕くんはいろいろとプレッシャーがあるみたいだから、少しくらいは息抜きしてもいいのではないかと・・・」
父上「それにしても、聡一くんとジュンくんには礼を言うよ。わたしが思っていたよりも、俊顕は実戦で追い詰められると、時として脆いところがあってな・・・」
私「俊顕くんは背負っているものが多いから、他人より負担が大きいんですよ。」
父上「その点、ジュンくんはいざとなると、精神がしなやかで強い。」
私「それは、俊顕くんほどジュンはいろんなものを背負ってないからですよ。まだまだ子供みたいなことろもあるし・・・」
父上「聡一くんは会社でのジュンくんを見てないからだよ。ジュンくんも家では聡一くんに甘えたいのだろう。」
私「私の知らないところで、ジュンも成長しているのかもしれませんね。」
父上「ジュンくんが協力してくれれば、俊顕もこれから先、どんなことがあっても仕事を続けられるだろうと思う。」
私「ジュンの方も、俊顕くんを同い年だけど兄弟みたいに慕ってるみたいですし。」
父上「それはとてもありがたいことだが、ジュンくんと違って、俊顕の方はもっと困った感情をジュンくんに抱いとるんだよ・・・」
私「その点については、ジュンの方も俊顕くんの気持ちを解った上で、俊顕くんと親友として付き合っていきたいと言ってます・・・」
父上「そうかね、ジュンくんは俊顕の気持ちを解った上で、付き合ってくれとるわけだな。」
私「俊顕くんは、ジュンへの感情はちゃんと温存しながら、ちゃんと結婚もして跡継ぎを作ると言ってますから、心配はないと思います。」
父上「それを聞くと、少しは安心できたよ。」
私「ほんとうに、俊顕くんと友達になれたのは、ジュンにとってもすごくよかったと思います。」
父上「まあ、これからは、聡一くんとも親戚のような付き合いをしていければいいと、私は思ってるんだよ。」
私「もうじゅうぶんに親しくしていただいていると思うのですが・・・」
父上「われわれの方の親類というと、こんなことは言うのも恥ずかしいのだが、親戚付き合いと言っても、血縁より欲が優先されてな、言ってみれば、金の切れ目が縁の切れ目といった付き合いがほとんどなんだよ。その点、ジュンくんや聡一くんとは、欲得抜きのきれいな付き合いができる。これは私には貴重なことなんだよ。よろしく頼む。」
私「そんな、頭を上げてください。もったいないお申し出、ありがとうございます。私たちでいいんでしたら、喜んで。」
父上「受け入れてもらって、私もほっとしたよ。ただ、この話は、聡一くんと私だけのことにしてほしい。万が一まずいことが起こるといけないので、あんまり大っぴらにはしないほうがいいんでな。」
私「それについては、了解しました。」
父上「聡一くん理解が早いから、話しがしやすいよ。」
私「ありがとうございます。」
父上「ジュンくんも仕事の飲み込みが早いと聞いておるよ。聡一くんの子供だからとうぜんなんだろうが・・・」
私「あの、ジュンは会社でうまくやっているのでしょうか?」
父上「ああ、心配することはないぞ。」
私「このところだいぶ仕事に慣れてきたような感じはするのですが、以前はけっこう大変そうだったので・・・」
父上「まあ、仕事だからな、大変であたりまえなのだが、それにしても、ジュンくんは良くやっとるよ。俊顕も刺激を受けて、がんばっとるようだし、お互いいい影響を与え合ってる。ジュンくんに来てもらってほんとうに良かったと思っとるよ。」
私「そう言っていただけると、少し安心できました。」
父上「聡一くんは若くて、一見ジュンくんみたいな子供がいるとは見えないんだが、やはり息子のことになると、親の顔になるな。いやいや、褒めとるんだよ、誰でも子供のことはいろいろ心配してしまうからな。」
私「まだまだ子供みたいなところもありますから、もっと鍛えてやってください。」
父上「それは俊顕も同じだよ、まあだんだんと成長していくだろう。刺激しあっていっしょに伸びていってくれれば、こんなにうれしいことはない。」

俊顕くんの父上とはいろいろと話しをしながら、ゆっくりと食事を楽しんだ。
そして車でマンションまで送ってくれるという申し出を丁重にお断りして、私は電車に乗って帰った。

マンションに帰り着くと、なんと俊顕くんが来ていた。

私「なんだ、俊顕、来てたのか。ちょっと前まで、父上と食事をしてたよ。」
俊顕くん「それは知ってますって、だから聡一さんが、おやじとどんな話しをしたのか聴きたくて、おじゃましてます。」
私「私が父上と食事するのを、俊顕は知ってたんだ。」
俊顕くん「だって、おやじに俺が頼んだ話しもあったからね。」
私「俊顕、どんなことを頼んだんだよ?」
俊顕くん「ウチと聡一さんとが、親戚付き合いみたいな感じでできないかって。」
私「そんな話しもしたなあ・・・」
俊顕くん「まあ、俺とジュンとは結婚できないけど、親友だし、ウチの親と聡一さんが親戚づきあいで切るといいなって思ったんだ・・」
私「なんか本で読んだんだけど、どっかの地方では親友同士の家が親戚付き合いするみたいだね。」
俊顕くん「そうそう、そんな感じです。だから、聡一さん、ウチの親と仲良くしてくださいね。」
私「ウチはべつにいいんだけどね。」
俊顕くん「聡一さんはそう言ってくれるって思ってたんだ。」

そう言って、俊顕くんはとびきりうれしそうないい表情をした。ふだん怖い顔をしているので、そういう優しい表情がすごく印象的であった。

ジュン「すげえ、俊顕んとこと、ウチが親戚付き合いするんだ。」
俊顕くん「ゴメン、ジュンにはこのことまだ話してなかったね。」
ジュン「べつに、これはいい話なんだから、どんどん進めていっていいと思う。」
俊顕くん「ジュン、改めてよろしくね。」
私「俊顕、なんかジュンにプロポーズしてるみたいだぞ。」
俊顕くん「そんなことしてませんよ。でも気持ち的にはそう思ってるけど。」
ジュン「俊顕、ありがとう。オレとしてはすごくうれしいよ。」
俊顕くん「ジュンって、ホント性格いいよね、誰かと違って・・・」
私「誰かって誰のことかな?」
俊顕くん「うわっ、聡一さん痛いって。もうグーで殴ったな。」
私「もっと強く殴って欲しいのか?」
俊顕くん「やっぱ、聡一さんってジュンと違って・・・」
ジュン「でも、とうさんと俊顕が仲良くなって良かった。」
私「とにかく、俊顕、私のことはともかく、ジュンと仲良くしてくれよな。」
俊顕くん「わかってますって。」

その夜はまた俊顕くんはウチに泊まっていくというので、少しせまくなるが3人でベッドに横になった。

ジュン「とうさん、おやすみのキスは?」
私「俊顕がいるから、ちょっとだけだぞ。」
俊顕くん「聡一さん、俺にもしてして。」
私「なんで俊顕にまでしなきゃなんないんだよ。」
俊顕くん「だって、親戚になったじゃないですか、だから、俺はジュンの兄弟みたいなもんでしょ?」
私「まあ、そう言えなくもないが・・・」
ジュン「とうさん、俊顕にもキスしてもいいよ、でもオレに先にしてね。」

私はまずジュンにおやすみのキスをした。そして次に俊顕くんに軽くキスをした。

俊顕くん「なんか、聡一さんのキスがうますぎて、なんかちょっと勃っちゃった・・・」
私「ったく、おやすみのキスくらいで、勃起させるなよ。」
俊顕くん「でも感じちゃったからしょうがないんですって。あっ、聡一さんだってちょっと硬くしてるくせに・・・」
私「こらこら、どこ触ってんだよ、ったく。」
ジュン「オレだって、とうさんから気持ちのいいキスされると、勃つときあるんだからな。」
私「ほら、ジュン、半分眠るながらしゃべらなくていいから、ふたりとももう寝なさい。」
ジュン「とうさん、おやすみ。俊顕も・・・」
俊顕くん「ジュン、おやすみ。」
私「ふたりともぐっすり寝なさい。」

私の両脇でふたりはすぐにすやすやと眠り始めた。翌日はヒロが朝早く来ると言っていたので、ヒロが来る前に、私だけでも起きていたほうがいいなと思いながら、私もだんだんと眠っていた。




theme : 男同士の恋愛
genre : 恋愛

tag : ゲイの父親

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Re: いい関係ですね

たけろー様

いくつになっても子供の頃の印象がどうしてもつきまとって、かわいく思ってしまいますね。本当はそろそろ私のほうが子離れしなくてはいけないのかもしれませんが・・・

こんにちは。きっと、聡一さんが謙虚で誠実だから俊顕くんのお父様も心開いてくれたんだと思います。

そうですねー。表現力?!どうでしょうね。学校や地域によると思います。僕の地域はドイツ語圏で日本人の学生も沢山在籍していますが、楽器によると思います。表現力があるのは一部の学生ですし、大学院からの入試はミスがあまり許されないのでピアノやヴァイオリンは自動的に日本の有名音大の方々にとっては有利だと思います。でも、結局日本人の学生も音楽表現を十分に学べているとは言い切れないまま帰国する人もいます。個人的には日本でも技術に関係なく、表現力溢れている人はいると思いますが。
確かに、ヨーロッパの人たちのほうが思い切りとか堂々としてる印象はあります。
日本の学生は留学にいろんなイメージがあるみたいですが、実際のところは技術的な面は当然のように求めれたりしています。
今は、ドイツ語の試験もかなり難しいレベルが大学入学後に求められたりして時々入試にも語学の試験があって大変です。
本当に楽器によるのではっきりとは言えないですが、僕は、金管楽器を専攻していますが、日本と全然レベルが違いますねー。ソルフェージュしてるところが違うとか、求められている音色が日本と全然違うとか。。
とにかく、音楽の基準は日本とは違いますが日本の方があってる人もいるみたいですし、まだ細かいところまではわからないです。
ただ、僕の先生も自分の哲学を表現しようよ。と言ってくださるので、そうゆう部分では本当に自分の音楽をしてる、あるいはするすべを学んでいるんだと思います。日本の音楽教育、寧ろ教育自体が「自由」というものに慣れていないから曲の組み立て方、練習の仕方、解釈の仕方を学べないから結局先生の言うとおりに演奏して、自分が出せなくなっているのかなと思っています。


Re: タイトルなし

真 様

くわしいコメントありがとうございます。
習得した技術を使ってどういう表現を行っていくか、難しいですね。
大変でしょうが日本では得ることのできないものを、身につけてくださいね。
また、そちらの情報がありましたら、なんでもけっこうですので、書き込んでいただけると、読むのが楽しみになります。
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