俊顕くんちのコンサート

先週の土曜、久しぶりに俊顕くんの家で私たちのコンサートが行われた。俊顕くんもジュンも社会人になって一年以上になり、少しは余裕ができてきたので、思い切ってやることになったらしい。
今回のコンサートでは、私も新しい曲をやることになって、ここ数ヶ月はけっこう練習を積み重ねてきた。それでも初めて人前で演奏する曲というのはけっこうプレッシャーで、いくら練習してもうまくいかないような思いにとらわれていた。

コンサート前日の金曜の夜、私は仕事を終えてから、一度家に帰って、ジュンと二人で翌日の準備をしてから、私はヒロのマンションに、ジュンは俊顕くんの家に泊まって最後の練習するということでいっしょに部屋を出た。
途中駅でジュンとわかれて、ヒロのマンションの最寄り駅で降りて、近くのスーパーで買い物をしてからヒロのマンションに行った。
その日はヒロは仕事で遅くなるということだったので、私は夕食の準備をしてから、ひとりで最後の足掻きで、ヴァイオリンをさらった。

そしてしばらくするとヒロが帰ってきたので、ふたりで遅めの夕食をとった。

私「それにしても、なんか始めての曲は心配だよね。」
ヒロ「だいじょうぶだよ、聡一、弾けるようになってるって。」
私「何もなければ、最後までちゃんと弾けそうだけど、どっか途中でひっかかっちゃうと、パニクっちゃってそこから弾けなくなりそう・・・」
ヒロ「だいじょうぶだよ、そういう時は俺がちゃんとフォローしてあげるからさ、安心していいよ。」
私「パニックになると、頭の中がまっしろになるからなあ・・・」
ヒロ「それじゃあ、復元ポイントを決めとこうよ、なんかあったら、そこで合わせる。」

夜なので夕食は少し軽めに済ませて、私たちは防音室に入って、演奏中に私が落ちることがあったら、復元できる場所をそれぞれの楽章で決めた。

ヒロ「これで安心でしょ、わかんなくなったら復元ポイントまで、聡一は俺のピアノに合わせてメロディーラインを適当に弾いてたら、なんとかなるって。そんで、ここから、入ってくればいい。」
私「だね、わかった、なんとかなりそう。」
ヒロ「ていうか、俺の予想では、聡一は落ちたりしないと思うけどね。」
私「ああ、がんばるけどね・・・」

コンサートの前日なので、練習は早めに切り上げて、私たちはべっどん入った。

ヒロ「それにしても、俊顕んちのコンサートは地獄だよね。」
私「確かに聴衆の耳が肥えてるから、手が抜けないよね。」
ヒロ「そうじゃなくて、出演の条件に最低10日の禁欲を強要されるじゃん。5日くらいならなんとかガマンするけど、10日は、キツイ。」
私「でも、やっぱ禁欲ってそれなりに効果があると思うよ。」
ヒロ「それは認めないわけじゃないけど、ちょっとつらい。」
私「それも明日までだよ。」
ヒロ「なんかおいしいものを目の前に置かれて、オアズケくらってるみたいなもんだよね。」
私「がまんするから、そのあとが楽しいんだよ。」
ヒロ「明日の夜は、ジュンちゃんは直さんが面倒見てくれるみたいだから、聡一と俺はふたりだけで、フフフ・・・」
私「こら、よだれをたらすんじゃないって・・・」
ヒロ「聡一だって勃起してるくせに。」
私「ほら、もうその話は終わり、寝なさい。」
ヒロ「しょうがねえなあ、明日のために、さっさと寝るか・・・」
私「おやすみ、ヒロ。」

いろいろと文句を言っていたわりには、ヒロはしばらくすると眠り始めていた。至近距離でヒロの寝顔を見ていた私も、だんだんと眠っていた。

翌朝、早めに起きて、朝食を食べ終わる頃に、俊顕くんの家の車が迎えに来てくれた。顔見知りの運転手さんと取り留めのないことを話しながら、車はすべるように滑らかな運転で俊顕くんの家まで連れて行ってくれた。さすがにこういう運転手さんの運転技術は、同じプロとはいえタクシーとは違ってレベルがはるかに高い。

ほとんど疲れもないまま俊顕くんの家に着き、中に入ると、ジュンと俊顕くんの弾くピアノが聞こえてきた。

ヒロ「うわあ、あいつら、またいちだんレベルアップしてやがる。素人のくせに生意気な。」
私「ヒロにそう言われたら、ふたりとも喜ぶんじゃないかな。」
ヒロ「そんなことふたりに言っちゃダメだって、秘密秘密。ますます付け上がって、俺、手に負えなくなっちゃうよ。」
私「心配しなくても、ヒロのピアノはプロだけのことはあると思うよ。」
ヒロ「俺がどんなヘロヘロの演奏しても、聡一は喜ぶくせに・・・」
私「ヒロとジュンのピアノだけは、どんな演奏されてもよく聞こえるのは事実だけどね。まあそれは、ヒロの演奏がいつもちゃんとしてるからだよ。」
ヒロ「まあ、聡一にそう言われると、悪い気はしないけどね・・・」

私たちは、紅茶を飲みながら、ふたりの練習を聴いていた。ふたりとも、社会人になって成長したのか、演奏に奥行きが増して、聴きごたえのある演奏をしていた。

ふたりの演奏の後は、私とヒロが練習をした。私のほうは、予定していた120%の演奏まで行き着くことが出来ず、一部納得のいかないところもあったのだが、ヒロのピアノはいつでも安定しているので、それに乗っかってなんとか合格点の演奏ができそうだった。

俊顕くん「聡一さん、何ヶ所か自信ないとこがあるでしょう?」
私「ちょっといくらやっても、なんとなくうまくいかないところがあるんだよね、やっぱわかった?」
ヒロ「けっこうホントはちゃんと弾けてるのに、ヘンに慎重なんなとこがあるんだよね、だから自信なさそうに聞こえるんだと思う。」
俊顕くん「ヒロさんのピアノといっしょなんだから、聡一は、もう好きにしてって感じで、すべてをヒロさんにゆだねたらいいんじゃない、いつもベッドでしてるように・・・」
私「ばあか、ベッドでは主導権はだな。」
ジュン「もう、ヒロちゃんがベッドでどうだろうが、どうでもいいよ。こんどはぜったいオレがとうさんと演奏するからな。」
俊顕くん「やれやれ、聡一さん、イヤミなくらいモテモテだな。」
私「うるせえ。」

そのあと、直さんも加わって、とりあえずリハーサルのようなものをして、お昼になった。
俊顕くんちでいつも出前を頼んでいるうなぎ屋さんの、うな重を食べて私たちはエネルギーを補給した。

直さん「それにしても、こんな精力のつくものを食べたら、演奏前に元気になりすぎそうだよ。」
俊顕くん「ちゃんと禁欲してくれました?」
直さん「したした、しょうがねえもんな、それにしても苦しかったぜ。」
俊顕くん「翼さんは、禁欲に協力してくれたみたいですね。」
直さん「翼はわりと淡白だから、むしろ喜んでるよ。でも、翼はおとといから急な出張で出かけちゃったけどね。」
ジュン「翼にいちゃんって、カッコいいよね、さっそうと世界を相手に仕事してるんだもん。」
俊顕くん「翼さん、たいへんなんだなあ。」
直さん「せっかくコンサートに招待してもらってたのに、来られなくてゴメンって言ってた。」

昼食の後は、休憩時間ということで、私たちは思い思いのやり方で、コンサートへの気持ちを調整していた。

コンサート開始30分前に、俊顕くんの母上があいさつのために現われた。

母上「いつも、演奏していただいて、ほんとうにありがとう。今日もよろしくお願いいたしますわね。」
私「こちらこそ、いつも演奏の機会を作っていただいて、感謝しています。」
ヒロ「こちらでの演奏は、いつも身が引き締まるような緊張感があります。」
直さん「回数を重ねるにしたがって、演奏のレベルが上がってますから、そのうちぼくなんかは出られなくなるかも・・・」
母上「毎回良くなっているのは事実ですけど、その中には直さんも含まれておりますわよ。私は直さんのモーツァルト、好きですわ。今回は俊顕といっしょに弾いてくださるそうで、ほんとうに楽しみにしていますのよ。」
俊顕くん「そろそろ、お客さんが来始めてるんでしょう、そちらのお相手はいいんですか?」
母上「あら、たいへん、私はこれで失礼します。今日はよろしくお願いしますわね。」

そう言うと母上はいそいそと部屋を出ていった。

俊顕くん「すみません、お騒がせしました。」
ヒロ「それにしても、チョー本物の奥様って感じだよね。」
俊顕くん「普通の母親のほうが、俺はいいと思うけどね。」
ジュン「オレなんか、母親いないもん。」
俊顕くん「ジュン、ゴメン、ヘンなこと言っちゃって・・・」
ジュン「まあ、オレのとこは、その代わりにとうさんがやさしいからいいけどね・・・」
直さん「俊顕、演奏前の集中はしなくていいのか?」
俊顕くん「ああ、そうだった、俺、ちょっとベッドルームにこもって、集中します。」

そして私たちは、演奏するときの衣装というほどではないけれど、午後のコンサート用の服にそれぞれ着替えた。

そしてコンサートの時間がやってきた。

まずは、直さんと俊顕くんのモーツァルトで、二台のピアノのためソナタ。この曲はここのコンサートでは初めてではないけれど、直さんと俊顕くんの組み合わせではまだ演奏されていない。
直さんの、幾分軽めだけど芯のあるころころとしたタッチのピアノと、俊顕くんの深いタッチのピアノのコントラストが、ほどよい緊張を生み出して、聞いている私たちを自然に演奏に引き込んでいくような、いい演奏だった。
前半最後の演奏が私とヒロだったので、本来なら、私たちは出番まで控え室で待っているはずだったが、私はヴァイオリンを手にして、サロンのいちばん後ろに立って、ふたりの演奏を聴いたのだった。

そして、ふたりの演奏が終わると、次はジュンのピアノ・ソロで、ブラームスのインテルメッツォが2曲。ブラームスらしいロマンティックな情感に溢れた曲を、いつの間にこんなに色っぽくて、さらにしなやかで奥行きのある演奏をできるようになったのかと、私でさえ驚くようなジュンの演奏だった。その演奏を聴いていると、私はなぜか感極まって目が少しウルウルしてしまっていた。

そしていよいよ私とヒロのシューマンになった。とりあえず、私もヒロも楽譜をおいての演奏をするつもりだったので、私用の楽譜立てが準備された。ヒロのほうの譜めくりは、直さんがしてくれることになっていた。
私とヒロは舞台に出て、ゆっくりとあいさつをして、位置についた。直さんもその間に出てきてヒロの斜め後ろに座った。
私はヒロに向かい合って、うなずきあって、演奏の開始を確認した。
そして、幸先のいいことに、ヒロのピアノと同時に、さらにちょうどいい音で弾き始めることができたので、そのあとはヒロのピアノにのっかって、私は気持ちよく演奏を続けた。一楽章の提示部の繰り返しのあたりから、私たちの出す音が、演奏会場からスコンと抜けて、気持ちのいい広々とした空間に際限なく広がっていった。
そして気持ちのいいまま、いつの間にか18分ほどの演奏を終えてしまっていた。
会場から起こった暖かい拍手の音で、私たちは、現実の演奏会場に舞い戻ってきたような気がしていた。

雲の上を歩くような感じで、楽屋がわりの俊顕くんの部屋に戻ると、ちょうど休憩時間になったので、ジュンと直さん、俊顕くんが待ってくれていた。

ジュン:もう、ヒロちゃん、ズルい、こんどはぜったいオレがとうさんと演奏するからね。
俊顕くん:やっぱ、ラブラブのカップルの演奏は、一体感がすごい。
私:俊顕、それ、ホメてんのか、それともヤキモチか?
俊顕くん:やだなあ、聡一さんって、そんなひねくれてましたっけ?
直さん:なんか、聴いてて、自然に聡一とヒロちゃんの世界に巻き込まれていった感じだよね。
ヒロ:なんか久しぶりに、ほんとうに気持ちのいい演奏ができた気がする。

休憩の後は、俊顕くんの指慣らしの軽いサティの演奏があり、そしてこの日のメインである、ジュンと俊顕くんの、2台のピアノによるペトルーシュカが演奏された。この日のために、ふたりは相当練習してきたので、聴き応えのある活き活きとした素晴らしい演奏だった。

そして最後にアンコールを、2曲演奏して、その日のコンサートは終わった。

そして演奏者と聴衆がいっしょになっての、アフターヌーンティーパーティーが開催された。
そこにはジュンの会社でお世話になっている人たちをあらためて紹介された。

そしてその日の夜は、ジュンは直さんのマンションに泊まることになっていたので、私はヒロとふたりで俊顕くんが呼んでくれたタクシーに乗って一緒に帰った。
ジュンは気をきかせてくれたようだが、私たちは演奏の疲れのせいか、そのままなにもなく寝てしまっていた。

翌朝、久しぶりにゆっくりと寝て、ブランチをふたりで食べてから、私たちは久しぶりに昼間のエッチを、明るい部屋の中でゆっくりと楽しんだのだった。


theme : 男同士の恋愛
genre : 恋愛

tag : ゲイの父親

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いいですね!

美しく、立派にいきてて、かわいい、楽器の上手な男たちと、演奏会!
自分もピアノをひいてて、妻と連弾してたときがあるんですが、

喧嘩ばかり。なにせ、あちらがひけないままなのに、合わせようとしてくるから、こっちはいつも我慢で。
いいなー。

都会だから、こんなに素敵な人がいるんでしょうね、、、、

近くにいないかな、、

遊んでくれてピアノを連弾してくれる男、、、、

Re: いいですね!

じった様

コメントありがとうございます。
ピアノが弾けると楽しいですよね。私はヴァイオリンですが、ジュンと連弾をしたくて、ピアノも少し弾きます。でも、私もピアノはあまりうまくないので、ジュンに我慢をさせているのかもしれませんね。
それから、今回のコンサートは、俊顕くんの家にはピアノが2台あるので、2台のピアノの曲が弾かれました。2台のピアノだと、けっこう迫力があります。
連弾してくれる相手、見つかるといいですね。

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すばらしい

レベルの高い会で演奏するってすごいです。でも気の合う仲間での演奏会っていいですよね。これからも進化していくのでしょうね。応援してます。

Re: すばらしい

たけろーさま

コメントありがとうございます。
久しぶりんコンサートで、私も新しい曲をやったので充実していました。
ただ、俊顕くんとジュンは社会人となって忙しいので、次回はいつになるかわかりません。
でも、出来る限り頻繁にやりたいとは思っているのですが・・・

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