俊顕くんとジュン

6月最後の土曜日、俊顕くんがほぼ一年の留学から帰ってきた。
そして次の月曜からは会社に来始めたので、ジュンはすでに俊顕くんに会っていたが、私はLINEで少しやり取りをしただけだった。

7月になって最初の土曜の夜、私はマンションで夕食を作っていた。
ジュンは午後からちょっと外出していたが、夕食までには帰るということだった。
夕食の準備が終わりかけたころ、ジュンが帰宅し、その後すぐ、こんどは俊顕くんが大荷物を持ってやってきた。

俊顕くん「聡一、久しぶり。」
私「なんか、ちょっと憂いが顔に出てて、一段とイケメンになったんじゃないか?」
俊顕くん「聡一っていつもやさしいね。」
ジュン「でも、この前の月曜日に会社に出てきた時、けっこう憔悴した顔してたもんね、心配しちゃったよ。まあ、一週間でだいぶ元に戻ったけどね。」
俊顕くん「会社で毎日ジュンの顔を見てたら、元気出てきたよ。ジュン、気にしてくれてありがとう・・・」
ジュン「べつにたいしたことしてないって。」
俊顕くん「聡一のほうももっとやさしくしてくれるとうれしいな。」
私「ったく、近い将来社長になろうというのに、もう甘えてばっかりで。」
俊顕くん「今はいいでしょ、社長じゃないんだから。」

夕食の準備ができたので、わたしたちはビールで乾杯をしてから、食事を始めた。

ジュン「そうだ、とうさんに言わなきゃ、俊顕の結婚式の日取りが決まったよ。
私「えっ、決まったのか、いつだよ?」
俊顕くん「ジュンの結婚式の翌月。」
私「そうなんだ、おめでとう。俊顕が結婚ねえ・・・」
俊顕くん「聡一には先輩としていろいろと助言してもらえるとうれしいな。」
私「先輩であることは確かだが、わたしは結婚に失敗してるからな、あんまり参考になるようなことは言えないかも。」
俊顕くん「だから、反面教師として頼りにしてるからね。」
私「まあ、俊顕の役に立つんだったら、助言ぐらいはするけどね・・・」
ジュン「とうさん、俊顕のちからになってあげてね。俊顕はオレの結婚式でアッシャーをしてくれるんだけど、オレは俊顕の結婚式でアッシャーできないんだよね。」
私「それはなぜなんだ?」
俊顕くん「アッシャーは基本未婚の男性がすることになってるんだ。だからジュンの結婚式の時に俺はまだ未婚だからできるけど、俺の結婚式の時には、ジュンはすでに既婚者になってるんだよね。」
ジュン「そういうわけで、オレは俊顕の結婚式にアッシャーできなくて、俊顕、ゴメンね。」
俊顕くん「それはしかたないさ、ジュンのやさしい気持ちだけ受け取っとく。」
私「結婚式が一か月違うだけで、けっこう違ってくるんだなあ。」
俊顕くん「それから、聡一、俺の結婚式では、ジュンとふたりで演奏してね、ジュンの結婚式で演奏するフランクのヴァイオリンソナタを俺の結婚式でも演奏してくれるとうれしいな。」
私「それは頼まれるのはすごく光栄だけど、俊顕の家の人脈なら、頼めばすげえ演奏家が来てくれるんじゃないのか?」
俊顕くん「俺にとっては、ジュンのピアノと聡一のヴァイオリンがいちばんいいの。」
私「まあ俊顕がそれでいいんだったら、演奏するけどさ。」
俊顕くん「演奏する時の衣装は俺が準備するからね。」
私「いいけど、あんまり派手なものにするなよな。」
俊顕くん「趣味のいいのを見繕うから心配しないでいいよ。」

夕食を終えて、3人で後片付けをしてから、わたしたちはソファに移って、さらに飲み始めた。

俊顕くん「じゃあ、聡一とジュンにお土産を渡すね。」
ジュン「俊顕のお土産、なんだろうな、楽しみ。」
俊顕くん「まずはアバクロのTシャツ。聡一とジュンの同じデザインの色違い。」
私「これはいい色だ。」
ジュン「俺もこの色、すげえ好き。」
俊顕くん「ふたりとも気に入ってくれてよかった。」
私「俊顕、お土産ありがとな。」
俊顕くん「ええと、このTシャツは前振り、もっとお土産あるからね。」
ジュン「俊顕、何持ってきてくれたの?」
俊顕くん「ジュンと聡一にちょうどいい下着。」
私「俊顕はホント下着が好きだな。」
俊顕くん「ほら、聡一が以前、このブランドのモノは前に余裕があってちょうどいいって言ってたじゃん。」
私「ああ、そうだった、全体はぴったりしてるんだけど、あの部分がゆったりしてて収まりがいいんだ。」
俊顕くん「ジュンと聡一はふたりとも巨根だから、ちょうどいいと思って多めに買ってきた。」
ジュン「俊顕、ありがとう、大切に使わせてもらうよ。」
俊顕くん「あとはね、お土産というより、俺がすげえ気に入って、ジュンや聡一といっしょに来てみたいなと思って買ってきたものがある・・・」
ジュン「何買ってきてくれたの?」
俊顕くん「今から出すからちょっと待って。」

そう言うと俊顕くんは大きな袋の中から着ぐるみのようなものを取り出した。

俊顕くん「まずは、これはジュンにホントちょうどいいってひらめいたんだよね。猫耳フード付き、アメリカンショートヘア風オーバーオール。ジュンはもともとかわいいけど、これを着るとさらにさらにかわいくなると思うよ。」
ジュン「今はちょっと着ると暑そうだけど、秋冬だとちょうどいいかも。」
私「なんか嫌な予感、まさか俺にも買ってきたんじゃないんだろうな。」
俊顕くん「心配しなくてももちろん聡一にも買ってきてますって。聡一には大きなお鼻が付いたフードの、ゾウさんオーバーオールだよ。」
私「そのフードについてる鼻、着ると邪魔になりそう・・・」
俊顕くん「だいじょうぶだって、聡一はこのお鼻よりも大きなモノを下にぶら下げてるくせに。」
私「アホ、論点をずらすな。とにかく、おっさんが着ると不気味だろうが。」
俊顕くん「だいじょうぶだよ、聡一は黙っていれば、すげえ若く見えるんだから。」
私「俊顕、おまえ、人のことさりげなくぼろくそ言ったな。」
俊顕くん「痛っ、もう聡一ったらすぐにグーで頭をぐりぐりするんだから・・・」
ジュン「俺のが猫、とうさんのがゾウ、そんで俊顕のは?」
俊顕くん「俺のはね、お腹にカンガルーポケットのついた、カンガルーバージョン、かわいいでしょ。」
私「まあ俊顕もたまに笑うとけっこう柔らかい感じになって、かわいくないこともない・・・」
俊顕くん「聡一、言ったね、俺のことをかわいいって。」
私「笑った時限定だ、俊顕、おまえはほとんど笑わないだろうが。」
俊顕くん「いつも笑ってたら、聡一、俺のこと好きになってくれる?」
私「ぜってえ好きになんかなんねえよ。」
俊顕くん「うわあ、聡一が俺のこといじめた。」
ジュン「とりあえず、みんなで試しに着てみようか?」
私「マジで着なきゃならないのか・・・」
俊顕くん「ジュンだって、聡一が着たところを見たがってるよ。」
私「それにしても夏にこの着ぐるみは暑いだろうが。」
ジュン「エアコン強めるから、試しに着てみようよ。オレもとうさんのゾウさん着ぐるみ見たいし。」
俊顕くん「ほら、ごちゃごちゃ言ってないで聡一も着てね。」
私「やれやれ・・・」

仕方なくわたしも、ジュンと俊顕くんに続いて着ぐるみをとりあえず着た。確かにジュンと俊顕くんが着るとけっこうかわいいのは確かだった。

俊顕くん「聡一のゾウさん、すげえ似合ってるじゃん。」
ジュン「うん、フードについてるお鼻がけっこうかわいい。」
私「ほら、とりあえず着たから、もう脱いでいいだろう。」
俊顕くん「まだダメ、写真撮ってからね。」

俊顕くんの高級なデジカメをテーブルに置いて、セルフタイマーで3人そろって写真に納まった。
ジュンと俊顕くんの零れるような笑顔が印象的ないい写真が撮れたと思ったら、俊顕くんからチェックがはいった。

俊顕くん「もう、聡一ったら、ちゃんと笑ってよ、これじゃあ笑顔じゃなくてただのひきつった顔だよ。」
私「いいんだよ、ジュンと俊顕がいい笑顔なんだから、じゅうぶんだろ。」
ジュン「とうさんもちゃんと笑って撮ったほうがオレもいいと思う。」
俊顕くん「ほら、聡一がいつもジュンの前でする、あの親バカまるだしの笑顔でいいんだよ。」
私「ったく、言いたい放題言いやがって・・・」

こんどはジュンの顔を見て、幸せな気分になってから、3人で笑顔の写真を撮った。

俊顕くん「これならいいんじゃない、聡一も笑顔がけっこうかわいく撮れてる。」
私「うっせえ、写真撮れたら、もうこれ脱ぐぞ、暑いし。」
俊顕くん「サイズはだいじょうぶみたいだね。それからジュンのバチュラ―パーティーの時にも着てもらうからね。」
私「なんだよ、そのなんたらパーティーっていうのは?」
俊顕くん「ジュンの独身最後の日に、ジュンの男性の関係者だけでするパーティーだよ。聡一も親としての責任でちゃんとパーティーを盛り上げてね。」
私「そのパーティーって、友達だけでやるんじゃないのか?」
俊顕くん「本来的にはバチュラ―パーティは友達でやるみたいだけど、聡一は親父とは言いつつも若いから、参加してもらうよ。」
ジュン「うわあ、楽しそう。」
俊顕くん「まあ、パーティーの詳細はジュンには秘密にしなきゃならないから、聡一とはそのうち打ち合わせするからね。」
ジュン「俊顕、いろいろありがとうね。」
俊顕くん「いいよ、友達だろ。」
私「俊顕、それにしても情けないくらいに締まらない顔したね。」
俊顕くん「うっせえ、聡一だってジュンの前だと俺以上に腑抜けた顔する癖に。」
ジュン「もう、とうさんも俊顕も、最近、仲良すぎだよ。」
私「ジュン、心配するな、とうさんはこんな奴とべつに仲がいいわけじゃないから。」
俊顕くん「俺も同意見だな。」
ジュン「ほら、やっぱ仲いいじゃん。」

そして夜遅くなって、俊顕くんが帰ることになった。
わたしとジュンは、駅前でタクシーを拾うという俊顕くんに付き合って、散歩がてら外に出た。
夜になっても蒸し暑い空気がよどんでいるようだった。

俊顕くん「駅まで来てくれなくてもだいじょうぶ。」
私「いいよ、散歩のついでだから。」
ジュン「少しは歩かないといけないからね。」

わたしたちはぶらぶらと裏道を駅まで歩いて行った。
駅前広場には客待ちのタクシーが並んでいた。
俊顕くんはそのうちの一台に乗って帰っていった。

ジュン「俊顕、帰っちゃったね。」
私「ウチに泊まっていきたがってたようだけど、まあ俊顕も帰国したばかりだから、外泊してないで両親といる時間ももたないといけないからね。」
ジュン「ちょっと歩きたいな、回り道して帰ろうよ。」
私「いいけど。」

わたしたちは一度駅の反対側に出て、かなり回り道をしながらマンションまで帰ることにした。

私「ジュンが結婚したら、こんな散歩もできなくなるな。」
ジュン「そんなことないよ、だってとうさんはオレたちと同居するんだから。」
私「同居してても、ひ〇さんをほったらかして、とうさんとふたりで散歩できないだろう。」
ジュン「そんなことないと思うよ。」
私「まあ、同居できるような大きさのマンションが見つかるのかわからないだろう。」
ジュン「それなんだけど、まだ本決まりじゃないから、とうさんには言ってなかったけど、新居が見つかりそうなんだ、そこだととうさんもいっしょに住めるよ。」
私「もういっかい確認するけど、ホントマジで、新婚さんと同居していいのか?」
ジュン「オレたちはとうさんがいっしょに住んでくれる方がいいと思ってるよ。」
私「ジュンはよくても、ひ〇さんのほうはどうなんだよ?」
ジュン「オレよりも、ひ〇さんのほうが、同居を望んでるよ。とうさんの家事能力に期待してるみたいだよ。」
私「なら、いいけどさあ・・・」
ジュン「とうさんが家事の大半をすることになったら、とうさんはどうする?」
私「とうさんにさせてもらえるなら、全部してもいいぞ。」
ジュン「じゃあ、同居しても何の問題もないじゃん。」
私「でもさ、ひ〇さんはウチの嫁となるんだけど、それはそれ、やっぱ若い女の人なんだから、洗濯ものとかをまとめてとうさんが洗ったりするのは、嫌がるんじゃないのか?」
ジュン「なんだ、そんなこと、何の問題もないよ、とうさんはゲイなんだから、若い女性の下着をいやらしい目で見たり絶対にしないじゃん。ひ〇さんから見たら、同性の親に洗濯してもらってるような感じになるんじゃないのかな。まあ下着くらいはオレが洗ってもいいし。」
私「料理にしたって、とうさんの作ったものがひ〇さんの口に合うかどうかわからないし・・・」
ジュン「それも心配ないって、もう何回もウチでひ〇さん、とうさんの作ったもの食べてるじゃんか、すげえおいしいって言ってたよ。それにひ〇さん、このところ料理学校にも通ってるから、習った料理を作りたがると思うよ。だからオレは二人の作った料理を食べ過ぎて太らないようにしないといけないね。」

ジュンたち新婚夫婦と同居することはもうすでに既定の事実になっているようだった。
ことさら難しく考える必要はなくて、ジュンとふたりで暮らしていた生活にもうひとり加わるだけと思えばいいのだろう。
まずはジュンたち若い二人がしたいようにしてもらって、わたしは邪魔にならないようにしていれば同居もそれほど問題ないだろう。

ジュンとおしゃべりしながら夜の散歩を楽しんで、わたしたちはマンションまで帰ったのだった。

theme : 男同士の恋愛
genre : 恋愛

tag : ゲイの父親

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俊顕くんも息子みたいですね。2人がそれぞれ結婚しても、楽しいこといろいろありそうですね。

Re: タイトルなし

たけろー様

コメントありがとうございます。
もう数か月後にジュンと俊顕くんが結婚するなんて、時のたつのは早いものです。

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